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Concerts/Live ShowsNo. 321

#1338 池本茂貴 isles & 武本和大 THE REAL “Departure”

2024年11月29日(金) 南青山BAROOM

text by Kazune Hayata 早田和音
photo by Shuto Katsumata 勝間田 崇登

【出演】

池本茂貴(tb)
武本和大(p)
佐藤潤一(b)
小田桐和寛(ds)
吉田篤貴(1st. vln)
西原史織(2nd. vln)
末廣彩風(va)
飯島奏人(vc)
陸悠(as)
馬場智章(ts)
佐瀬悠輔(tp)

【セットリスト】

1st SET
1.Determination (comp by Takemoto)
2.A Place (comp by Takemoto)
3.Tranquility  (comp by Takemoto, arr by Ikemoto)
4.Oath (comp by Ikemoto, arr by Takemoto)

2nd SET
1.Rhythm Blocks (comp by Ikemoto)
2.Dreamy (comp by Ikemoto)
3.Night Glow (comp by Ikemoto)*
4.Birth (comp by Takemoto)*
encore. LUX (comp by Ikemoto & Takemoto)

* previously unperformed

近年、ジャズ・シーンで急速にその表現領域を拡大させているラージ・アンサンブル。その最先端を行く2組のバンドが共演する貴重なライヴ、「池本茂貴 isles × 武本和大 THE REAL ”Departure”」が11月29日に南青山のBAROOMで開催された。池本茂貴islesは、慶應義塾大学ライトミュージックソサエティ出身のトロンボニスト池本茂貴が率いるラージ・アンサンブル。一方の武本和大 THE REAL “Departure”は、国立音楽大学出身で、井上陽介(b)トリオでも活躍するピアニストの武本和大が展開させている8ピース・バンド。ともにジャズ・ファン注目の存在だ。今回の編成は、islesから池本茂貴(tb)、馬場智章(ts)、陸悠(as, fl)、佐瀬悠輔(tp)、小田桐和寛(ds)というホーン・セクションを中心とした5人。またTHE REAL “Departure”からは、武本和大(p)、吉田篤貴(vln)、西原史織(vln)、末廣彩風(va)、飯島奏人(vc)、佐藤潤一(b)というストリングス奏者を中心とした6名。この日のためにオーガナイズされた11人編成のスペシャル・バンドだ。

日本のミュージックシーンの若手トップを揃えた一夜限りのライヴ。BAROOMの円形ホールを埋め尽くしたオーディエンスが送る大きな拍手の中、はち切れんばかりの勢いを伴った武本のピアノがライヴの火蓋を切る。するとホーン・セクションとストリングスが一体となったリズミカルなリフがスタートして、力強く演奏をリード。武本のライヴでたびたび耳にしてきた「Departure」が圧倒的な色彩感覚とともに迫り、このライヴが単なる合同演奏ではなく、入念かつ斬新なアレンジが施されたものであることが実感される。その後、第1部は、武本曲を池本が編曲した「Tranquility」、その逆に池本曲を武本がアレンジした「Oath」などを披露。ストリングスを擁するDepartureと、ホーン・セクションを擁するisles、異なる編成を持つ両者の楽曲が新たなアレンジによって繰り広げられるフレッシュな演奏に会場から大きな拍手が寄せられた。

 

islesとDepartureの持ち味であるアンサンブルの妙が溶け合わされたカラフルな第1部に続く第2部では、両バンドのもうひとつの持ち味であるパワフルなライヴ・パフォーマンスが溢れ出る。その最たるものが第2部オープニングの池本曲「Rhythm Blocks」だった。文字通り、さまざまなリズムのブロックが連ねられるトリッキーな構成を持つ同曲は、馬場智章の壮大なソロをきっかけにして加速度的にグルーヴ力がアップ。演奏の合間にはストリングス奏者たちのヘッドバンギングがスタートするなど、プレイヤー全員が今回の演奏を心から楽しんでいることが伝わってきた。ライヴ終盤には、冬の月明かりをモチーフにして書かれたロマンティックな「Night Glow」(池本作)、躍動感漲るリズムの中でストリングス奏者の演奏とヴォーカルがフィーチャーされた「Birth」(武本作)というそれぞれの新曲を披露。ふたりが学生時代に共作した想い出の作品をデュオ演奏したアンコール曲「LUX」まで温かで音楽性豊かなステージが繰り広げられた。

なお、このライヴの母体となった両バンドのうちの武本和大 THE REAL ”Departure” の単独ライヴが、2025年1月14日(火)に渋谷ボディ&ソウルで開催される。こちらの出演は、武本和大(p)、佐藤潤一(b)、きたいくにと(ds)、岡本健太(perc)、吉田篤貴(vln)、西原史織(vln)、末廣彩風(va)、飯島奏人(vc)の8名。このライヴの後に同バンドの1stアルバム録音が行なわれるとのことで、レコーディングを目前に控えた完成度の高い演奏が期待される。

 

ボディ&ソウル予約サイト https://www.bodyandsoul.co.jp/event/250114#content1top

早田和音

2000年から音楽ライターとしての執筆を開始。インタビュー、ライブリポート、ライナーノーツなどの執筆やラジオ出演、海外取材など、多方面で活動。米国ジャズ誌『ダウンビート』国際批評家投票メンバー。世界各国のメジャー・レーベルからインディペンデント・レーベルまで数多くのミュージシャンとの交流を重ね、海外メディアからの信頼も厚い。

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