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Concerts/Live ShowsNo. 330

#1383 4Jazz Chopin Concerts 8/30-31(関西万博「ショパン・ウィーク」関連ジャズ・コンサート)

text by Ring Okazaki  岡崎 凛

国立フリデリク・ショパン研究所が、大阪・関西万博の「ショパン・ウィーク」期間中にジャズ・コンサートを開催。「ショパン作品をジャズで再解釈した特別な4公演」を企画し、大阪市中央区心斎橋のホールで4組のトリオが(1組はゲストとともに)登場した。

 

日時:2025年8月30日(土)〜31日(日)
会場:大阪PARCO「Space14」コンサートホール
入場無料、(要事前予約)
8/30(土)
18:00~ Artur Dutkiewicz Trio(アルトゥル・ドゥトキェヴィチ・トリオ)
20:00~ LIS + Phew+ Mayu Shirai(白井真優、dancer)
8/31(日)
17:00~ RGG
19:00~ Andrzej Jagodziński Trio(アンドジェイ・ヤゴジンスキ・トリオ)


心斎橋パルコ14階のホールは、ジャズレジェンドと新進の演奏家の奏でるサウンドに包まれ、拍手に包まれた。誰もがポーランドジャズの豊かさに触れたはずだ。このような機会が今後も増えることを願ってやまない。また、出演者、主催者、コーディネーターたちのチーム力の高さを称賛したい。このコンサートはライヴ配信され、終了後に録画が公開された。現在はそのうち2つがYouTubeで鑑賞できる。

フリデリク・ショパン研究所のフェイスブックのページに載った「4Jazz Chopin Concerts」の説明には「ポーランド・ジャズ界のスターたちが奏でるショパン」>というの説明があった。このコンサートに現れたのは、まさに「スター」たちだった。とりわけAndrzej Jagodziński (アンジェイ・ヤゴジンスキ)にはスタープレイヤーの威光を感じた。

一方で音楽界のスターというより、現代アート作家のようなミュージシャン、例えばヤン・スモチンスキのトリオ、LISを選んだ姿勢に、主催者の深い洞察力と心の広さを感じる。8月30日の2つ目のコンサートに登場したLIS + Phewは、ダンサー兼日本語朗読者、白井真優(Mayu Shirai)も加わって、ショパンを題材にアヴァンギャルドな楽曲を披露した。ポーランド語と日本語のナレーションで作曲家ショパンの人生を語りながら、Phewのラップトップとヴォイスの加わる斬新なコンテンポラリージャズが展開された。

31日に登場したRGGトリオもまた、ショパン曲を題材に新たな取り組みを展開していく。彼らは2013年にカロル・シマノフスキを題材にしたアルバムを出しているが、再びクラシック作品に向かおうとしているようだ。ショパンのピアノのメロディーをRGGから聴くという初めての体験こ、素直に胸を躍らせた。そのアプローチはこれまで通りのRGGスタイルだった。

30日出演のArtur Dutkiewicz(アルトゥル・ドゥトキェヴィチ)のトリオは、長年に渡るショパンとの取り組みを丁寧に辿るように、味わい深いサウンドと躍動感に満ちたプレイを披露した。ピアノの音が驚くほどソフトに耳に届き、心が安らぐ。優雅だが芯のある力強い音だ。ピアニストの描く豊かな世界に浸り、彼を支えるベーシストとドラマーの圧巻のプレイを楽しんだ。

31日のAndrzej Jagodziński Trio(アンジェイ・ヤゴジンスキ・トリオ)はポーランドが誇る「ショパン・ジャズ」の礎を創り上げた代表格として、堂々たる姿と重厚感で観客を魅了した。ショパン名曲に包まれ、軽やかに踊るピアノの音を追い、トリオの技に心を躍らせた時間は、ひと月近く経っても輝きを失うことはない。

8月30日(土)
①18時~ Artur Dutkiewicz trio(アルトゥル・ドゥトキェヴィチ・トリオ)
Artur Dutkiewicz – piano
Michał Barański – contrabass
Sebastian Kuchczyński – drums

② 20時~ LIS+Phew, Mayu Shirai
Jan Smoczyński -synth.
Łukasz Poprawski – sax
Michał Miśkiewicz – drums
Phew – voice, electronics
Mayu Shirai – dance
(コンサート動画は、2025年9月時点では、FacebookのThe Fryderyk Chopin Institute の2025年8月31日のライブ配信についての投稿を辿ると試聴可能)

8月31日(日)
①17時~ RGG
Łukasz Ojdana– piano
Maciej Garbowski – contrabass
Krzysztof Gradziuk – drums

②19時~ Andrzej Jagodziński Trio(アンジェイ・ヤゴジンスキ・トリオ)
Andrzej Jagodziński – piano
Adam Cegielski – contrabass
Czesław “Mały” Bartkowski – drums
コンサートの動画はYouTubeでは限定公開。2025年9月時点では、FacebookのThe Fryderyk Chopin Institute の2025年8月31日のライブ配信についての投稿を辿ると、試聴可能。


日本の音楽ファンにとって非常に貴重なこの公演は、無料だがインターネット利用の申込抽選を経る必要があった。多くの応募者が抽選を待つことになったこの催しによって、自分はショパン人気の大きさにやっと気づいた。クラシックピアノ、室内楽、オーケストラ、カリグラフィ、映画など多岐に渡るショパン関連のパフォーマンスやアート展示が企画されたショパンウィーク※の一環として催されたコンサートは、音楽文化の多様性を重視する主催者の理念に触れるものだった。
※詳細は外部リンク参照→「フリデリク・ショパンウィーク」

<フリデリク・ショパン研究所のFacebookページより、本コンサートに関する解説>
8月30日(土)
18:00 |Artur Dutkiewicz Trio Trio
個性的で独自のスタイルを持つアルトゥル・ドゥトキェヴィチ・トリオ。調性から無調性への自然な移行を特徴とし、ショパンの伝統やポーランドの民族舞踊の響きを織り交ぜたプログラムを演奏します。クラシックや伝統音楽からのインスピレーションに自由な即興が加わります。
20:00 |LIS + Phew + Mayu Shirai (ダンス)
LIS(ヤン・スモチンスキ、ウーカシュ・ポプラフスキ、ミハウ・ミシキェヴィチ)が、レパートリーの定番曲や最新アルバムからの作品を披露。ショパンの「子犬のワルツ」「エチュード f短調」「ワルツ a短調」「ノクターン es短調」「プレリュード c短調」「ソナタ b短調より葬送行進曲」、さらに「ピアノ協奏曲 e短調」の一部を新たな解釈で演奏します。特別に、日本のアーティストPhewと振付家・ダンサーの白井真優を迎え、ショパン・ウィークならではのコラボレーションを展開。
8月31日(日)
17:00 |RGG
最新プロジェクト「Soundscapes of Chopin」では、ショパン作品の「音響的刷新」を目指し、よく知られた旋律を現代的な音楽風景に溶け込ませた新しい音楽体験を創り上げます。RGGならではのショパン解釈は、現代ポーランド・ジャズ文化の声を映し出しています。
19:00|Andrzej Jagodziński
国際的にも高い評価を受けてきたアンドジェイ・ヤゴジンスキ率いるトリオが、ショパンの音楽に再び挑みます。今回の特別プロジェクト CHOPIN / JAGODZIŃSKI《ソナタ b短調》 では、ロマン派の最高傑作のひとつを大胆に再解釈。ソナタ b短調の全4楽章(有名な葬送行進曲を含む)をジャズとして蘇らせるとともに、プレリュード、ノクターン、エチュード、マズルカといった小品も独自に再構築します。


<コンサート後の出演者たち>
コンサートの後には和やかな雰囲気のの中でファンと交流する出演者の姿があった。ポーランドのジャズを長年第一線で紹介してきた音楽ジャーナリスト、オラシオ氏と出演者たちの写真 (画僧はクリックすると拡大されます):

岡崎凛

岡崎凛 Ring Okazaki 2000年頃から自分のブログなどに音楽記事を書く。その後スロヴァキアの音楽ファンとの交流をきっかけに中欧ジャズやフォークへの関心を強め、2014年にDU BOOKS「中央ヨーロッパ 現在進行形ミュージックシーン・ディスクガイド」でスロヴァキア、ハンガリー、チェコのアルバムを紹介。現在は関西の無料月刊ジャズ情報誌WAY OUT WESTで新譜を紹介中(月に2枚程度)。ピアノトリオ、フリージャズ、ブルースその他、あらゆる良盤に出会うのが楽しみです。

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