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Concerts/Live ShowsNo. 331

#1388 川村結花 30th Anniversary Band Live 2025〜 Melody Maker

Text by Hideo Kanno 神野秀雄

川村結花 30th anniversary Band Live 2025〜 Melody Maker
2025年10月12日(日) 16:30 19:30

川村結花 (vo,p)
石成正人 (g)
tatsu (b)
坂田学 (ds)

【1st 16:30】
1. ときめきのリズム (作詞:松本 隆)
2. Travels
3. もううそがつけなかった
4. 苗字
5. カワムラ鉄工所 (作曲:柴草 玲)
6. 大切 -川村結花solo-
(作詞:FUNKY MONKEY BABYS、川村 作曲:FUNKY MONKEY BABYS、川村結花、NAOKI-T)
7. 遠い星と近くの君 (作詞:YO-KING)
8. 夜空ノムコウ (作詞:スガシカオ)
9. Home
EC1. ビューティフル・デイズ
EC2. ヒマワリ

【2nd 19:30】
1. ときめきのリズム (作詞:松本 隆)
2. Travels
3. 1999
4. 苗字
5. カワムラ鉄工所 (作曲:柴草 玲)
6. 大切 -川村結花solo-
(作詞:FUNKY MONKEY BABYS、川村 作曲:FUNKY MONKEY BABYS、川村結花、NAOKI-T)
7. 遠い星と近くの君 (作詞:YO-KING)
8. 夜空ノムコウ (作詞:スガシカオ)
9. Home
EC1. 乾杯のうた
EC2. ひまわり

※作詞・作曲の記載がないものは、川村結花による。

<夜空ノムコウ>の作曲で知られる川村結花がデビュー30周年を迎えた。矢野顕子、坂本美雨、松たか子、ナオト・インティライミ、藤井フミヤ、渡辺美里、鈴木雅之、城 南海など数多くのアーティストに楽曲提供し、また、FUNKY MONKEY BABYSとの共作も多く、<あとひとつ>では第52回日本レコード大賞の作曲賞受賞している。川村のキャリア初となる2枚組オールタイム・ベスト盤『Melody Maker』が2025年10月8日にリリースされたことも記念して30周年記念ライヴが行われた。

川村は、大阪府出身で、東京藝術大学作曲科に進学(同級生に塩谷 哲、岩代太郎がいる)、早稲田大学モダンジャズ研究会のレギュラーバンドのピアノを務め、ソニーミュージックエンターテイメントのオーディションに合格しプロデビューに至る。自己のアルバムとしては、1995年1月『ちょっと計算して泣いた』(東芝EMI)、そのシングルとして<あなたを失うことより>がリリースされている。先だって『SMAP 005』に<ギョーカイ地獄一度はおいで>という曲を提供したのが作家活動の始まりだが、ちなみにこの曲は企画インストアルバム『SMAPPIES – Rhythmsticks』(1996年、歌抜き)にスライド・ハンプトン編曲でヴィレッジ・ヴァンガード・オーケストラ(サド・ジョーンズ=メル・ルイス・オーケストラの後継)のメンバーに、ギル・ゴールドスタイン(p)、ジョージ・ムラーツ(b)、トミー・キャンベル(ds)で収録されるという後日談がある。学生の頃は好きなミュージシャンに、ジョニ・ミッチェル、リッキー・リー・ジョーンズ、ケニー・カークランド、パット・メセニーなどを挙げていたような気がするし、ECMもよくかかっていた高田馬場のジャズ喫茶「マイルストーン」へのオマージュ曲もその後創られた。ともあれクラシック系作曲、ジャズのバックグラウンドも持ち、自由自在でインタラクティヴなバンドライヴを可能としている。

ライヴは、コカコーラCMに使われた、松本 隆の詞に曲をつけた<ときめきのリズム>から始まり、客席の気分が一気に高揚する。デビュー30周年を記念していることもあり、新曲よりも『Melody Maker』から想い出の楽曲を散りばめた選曲となる。その中でもアルバム『Lush Life』『Home Again』からの選曲が多めとなっていた。
柴草 玲との共作<カワムラ鉄工所>は祖父母の家の想い出を歌った一曲であり、子供の頃から上京後への時間の流れと心境の変化が伝わる。なおここで歌われた<カワムラ鉄工所>の孫の一人に、ドイツ在住のクラシックピアニスト河村尚子(かわむらひさこ)がいる。
FUNKY MONKEY BABYSとの共作<大切>は、バンドメンバーがステージからはけて、川村ソロでの演奏で。『Melody Maker』では録りおろされて最終曲として配されている。
終盤に向けて、1998年1月にSMAPに提供されて、川村の曲を日本中に広めることになった<夜空ノムコウ>から。美しいピアノイントロに始まるSMAP版とは趣の異なる演奏。本編最後は<Home>。この曲は『Melody Maker』では1曲目に配されていて、いずれにしても川村の世界観を代表する一曲だ。

アンコール2曲目は、「私は、全部この曲から始まったと思っています。私の中では、ここから動き出したと思っている大事な曲です。」と語り、そして石成のアコースティックギターのカッティングから始まった<ヒマワリ>。石成も川村の曲の中で最も好きだと言っているらしい。1998年5月、Epicに移籍して初めてリリースされたシングルで、名盤『Lush Life』に収録されている。川村は語りながら少し涙ぐんでいたかも知れない。

全編にわたって、メンバーの温かい想いに溢れて、心から共演を楽しんでいることが伝わる30周年にふさわしい素晴らしいライヴ。やり遂げた川村とメンバーに惜しみない拍手が送られ、それは、<乾杯>の歌詞にあるように観客たち自身の人生を肯定する感慨を共有するようでもあった。そして誰しも次のバンドライブを楽しみにしていたと思う。

2026年1月〜2月には、川村結花は全国6会場でソロライブ「独奏2026」が開催される。そして、何よりもMelody Makerとして、これから生まれてくる楽曲の数々を楽しみにしたい。

<ひまわり> (1998年)〜『Rush Life』に収録

コカ・コーラ CM 「Live the Moment ココロが踊りだす・春が来た編」

川村結花 <カワムラ鉄工所>

川村結花 ひとり25周年+1「ビューティフル・デイズ」弾き語り at FJ’s

神野秀雄

神野秀雄 Hideo Kanno 福島県出身。東京大学理学系研究科生物化学専攻修士課程修了。保原中学校吹奏楽部でサックスを始め、福島高校ジャズ研から東京大学ジャズ研へ。『キース・ジャレット/マイ・ソング』を中学で聴いて以来のECMファン。Facebookグループ「ECM Fan Group in Japan - Jazz, Classic & Beyond」を主催。ECMファンの情報交換に活用していただければ幸いだ。

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