#962 Saxophone Summit サキソフォン・サミット〜故伊藤博昭さんを偲んで
2017.6.27 Birdland, NYC
text by Makoto Oguro
Saxophone Summit
Dave Liebman (ss) デイヴ・リーブマン
Joe Lovano (ts) ジョー・ロヴァーノ
Greg Osby (as) グレッグ・オズビー
Phil Markowitz (p) フィル・マーコウィッツ
John Benitez (b) ジョン・ベニテス
Obed Calvaire (ds) オベッド・カルヴェア
バードランドでデイヴ・リーブマンを聴いた。
ヴォーカリストのErika Matsuoより、今日は夜9時からWest 4のワシントンスクエアパークにてJP Jofreのタンゴオーケストラの演奏ありとの情報あり、 若いミュージシャン数名連れてダウンタウンに向かいピアソラの名曲を聴いた。
そこでErikaから静岡のライブハウスオーナーと名古屋のビッグバンドのバンマスを紹介され、お互い結構酔っていたが旅は道づれ、ジャズ仲間全員でバードランドに向かった。
演奏旅行中の高揚した気分はこのように社交的ともなるのか、とも思いながら あとで写真を見るとそこには楽しげな笑顔の私達が写されていた。
今回は私の還暦記念のレコーディングでピアニストの米澤めぐみさんにお願いしていたのだが、ちょうどめぐみさんはグレッグ・オスビー・バンドのピアニストを4年間やっていたという話をあとで聞き、不思議な縁に驚いたものだ。
80年代のデイヴ・リーブマンのレコードを地元の「ジャズ・フラッシュ」で聞いている。当時こんな大音響の中でジャズを聴きながら試験勉強をしたことなどふと思いながら、リーブマンが大好きであった亡き伊藤博昭さんを偲んでいる。
伊藤さんはプロモーターとして活躍していた当時の六本木のジャズバー界隈の話に詳しい方で、ミスティのオーナーがビルからダイブしたんだよね、みたいなもの凄い話をやさしい口調でされる方であった。ジョー・パスの教則本の和訳もされていて、ジャズ理論も詳しく色々教えてもらったものだ。
音楽は時空を超え、古老にはいにしえの良き瞬間を、若者には斬新な瞬間を共に連れてやって来る。
若い世代のミュージシャンやDJがマイルスってカッコいいですね!と私に話しかけて来るのだが、実際彼らにはとても斬新に聴こえるのだ。他方、高校生に聞くとスイングジャズがメチャカッコいいなんてことを無表情に語ってくれたりする。
じつは今回の旅行中、偶然の機会で現代のデイヴ・リーブマンをサキソフォン・サミットで聴くことができた。どうも伊藤さんが、小黒こっちこっちってここまで導いてくれていたような気がするだが...。
40年時間が経ってもスタイルは変わらないものの果敢に新しい試みへ取り組むデイヴ・リーブマンの姿がそこにはあった。
そのサキソフォン・サミットの音楽はグレッグ・オズビーの参加もあり、私にはとても現代的で都会的な斬新なハーモニーであったのだが、その場で一緒に聴いていた若いミュージシャンは何を感じて聴いていたのだろうか。
もしかすると私にとっては郷愁を感じる80年代のリーブマンのサウンドにこそ彼らはむしろ斬新で革新的な印象を感じるのかもしれない。こんなにエネルギーいっぱいのサウンドは今はない。
伊藤さんは亡くなられる数時間前までジャズバーで若者達とジャズを演奏し良き時を分かち合っていらっしゃった。きっとそこには敬愛するデイヴ・リーブマンと同じ精神性と魂があったのだと思う。80年代から現代までたしかにずっと変わらない音楽への愛情があったのだと思う。
伊藤さんの追悼記事を書きながら旅行話や今の若者の感覚についてもFBに書いてみた。
フラッシュのマスター、新潟ジャズ・ストリートで連日頑張りすぎ疲れがでてしばらく店を休んでたみたいですよ。ちょっと労いに行ってみてくださいね。 お疲れ様です。フラッシュの佐藤さま、 D. リーブマンさま、そして伊藤博昭さま、色々ありがとうございました。ゆっくりお休みくださいませ。
小黒仁
新潟在。内科医。ベーシスト。