#1122 喜多直毅クァルテット2日連続公演第2日
2020年1月25日(土) 東京渋谷・公園通りクラシックス
Reported by Kayo Fushiya 伏谷佳代
Photos: provided by Naoki Kita Quartette
<出演>
喜多直毅クァルテット
喜多直毅(音楽とヴァイオリン)
三枝伸太郎(ピアノ)
北村聡(バンドネオン)
田辺和弘(コントラバス)
<プログラム>
鉄条網のテーマ
燃える村
影絵遊び
さすらい人
犬橇のテーマ(新曲)
厳父
繰り返し演奏されることで楽曲は時のなかに輪廻し、さらなるヴァイタリティを得る。五感に迫るこの日のパフォーマンス、色彩感で捉えるならば鞣(なめ)したような輝きとダークな迫力が増している。音楽への激しい内攻によって抉られた空間は、潔い静寂を湛える。「鉄条網のテーマ」や「燃える村」など、クァルテットと歩みを共にしてきた楽曲のメロディは確かに馴染み深いが、懐かしさとともに覚える戦慄は一期一会だ。震撼を抱き込んだ不思議なデジャ・ヴュ感は、聴き手の意識を一層各プレイヤーのソロへと向かわせる。いずれも貫禄たっぷり、である。バンドネオン(北村)の、空間を呑み込むような音の斬り込み、その余白と時空を切り取る造形力に度肝を抜かれる。「影絵遊び」での優雅な遊戯性から反転、「さすらい人」、「犬橇のテーマ」へと至るヴァイオリン(喜多)の圧倒的な身体性、そのエネルギーの総量。視聴覚が一体となったみごとな流線形がぐいぐいと押してくる。新曲の「犬橇」は、クァルテット史上最速といえるスピードだ。臨界点が移動するさま、音の波形を幻視する。スコアが踊る。終曲「厳父」は、一分の隙もない凄みのアンサンブル。地割れのような音圧、その余韻から幾多もの豊穣な風景を現出させるピアノ(三枝)。強靭さのなかにいかなる時も溢れんばかりの歌を内包し、音楽をボトムから抱擁するコントラバス(田辺)。この4人でなければ成立しない物語世界だ。表現とは代替の効かぬものなのだ、という峻厳だが疎かにされがちな事実—それが刃のように突きささってくる。(*文中敬称略)
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