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ある音楽プロデューサーの軌跡 稲岡邦弥No. 327

#61 今田勝さんとの仕事「追悼編」

text: Kenny Inaoka 稲岡邦彌

ピアニスト、コンポーザーの今田勝さんが亡くなった。5月30日、享年93。死因は老衰ということだから大往生だろう。
所属事務所のTCP亀川衛代表から紹介されてアルバム制作に携わることになったが、僕が知り合った頃の今田さんは真面目な職人肌のミュージシャンで、正直なところ当初はなかなか接点が見つからなかった。
同じ事務所に所属していたジョージ大塚さんとはハードコアな”ジャズ・フュージョン”を手掛けており(こちらは、「マラカイボ」)、時代のトレンドもあり今田さんも 「ナウイン」(ナウ=今だ、ウイン=勝)名義のバンドを結成、フュージョン・テイストの音楽にシフトしていった。今田さんは典型的なメロディ・メイカーで、しかも一度耳にしたらすぐ口に出せるような親しみやすいメロディをいくつも生み出した。当時のTVからはよく今田さんのメロディが流れていたものだ。ハイライトはNYで制作した2枚のアルバム。しばらく、お預けを食らっていた本来のジャズ・スタンダード・ファンのために『Songs on my Mind』という真性ジャズ・アルバムを制作して今田さんとの仕事は終わりを告げた。
今田さんのご自宅があった保土ヶ谷に近い旭区で毎夏開かれるジャズ・フェスにはレギュラーで出演されていて何度か聴きに出かけたが、転居してからはその機会もなく、消息も途絶えていたところの訃報だった。ゴルフ好きだったジョージさんやかつてのゴルフ仲間とあちらの世界でもゴルフに興じておられることだろう。
今田さんとの仕事については、「ある音楽プロデューサーの軌跡 #44 今田勝との仕事」にその詳細を記したので、興味のある方は参照されたい。

ある音楽プロデューサーの軌跡 #44「ピアニスト今田勝さんとの仕事」

稲岡邦彌

稲岡邦彌 Kenny Inaoka 兵庫県伊丹市生まれ。1967年早大政経卒。2004年創刊以来Jazz Tokyo編集長。音楽プロデューサーとして「Nadja 21」レーベル主宰。著書に『新版 ECMの真実』(カンパニー社)、編著に『増補改訂版 ECM catalog』(東京キララ社)『及川公生のサウンド・レシピ』(ユニコム)、共著に『ジャズCDの名盤』(文春新書)。最新刊に訳書『キース・ジャレットの真実』(DU BOOKS)。2021年度「日本ジャズ音楽協会」会長賞受賞。

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