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特集『ECM: 私の1枚』

齊藤 聡『Keith Jarrett / Standards Live』
『キース・ジャレット /スタンダーズ・ライヴ』

いまさらいうまでもなく、キース・ジャレットの活動にはさまざまなグループやスタイルがあって、筆者は特に初期のアメリカーナ感覚が色濃い作品群を好んで聴いている。

ゲイリー・ピーコック、ジャック・ディジョネットとのトリオ(のちにスタンダーズと称される)に関しても同様だ。ピーコック名義の『Tales of Another』(1977年録音)や『Standards Vol.1』、『同 Vol.2』(1983年録音)の絢爛豪華さには驚かされた。おそらくは『Bye Bye Blackbird』(1991年録音)前後からだろうか、キースは音数を絞りシンプルさを追求するように変化した。このことについて、故・菊地雅章が「あのキースだって変化を恐れないことに感動する」といったようなことをどこかに書いていた記憶がある。

『Standards Live』(1985年録音)はその狭間にあって、高揚感と歌心がたいへんな強度で放たれた作品である。ブートレグを含め同年の録音をいくつも聴いたが、このアルバムに勝るものはない。<Falling in Love with Love>や<The Way You Look Tonight>に横溢する快楽といったらない。フランツ・カフカによるジャケットのイラストも素敵だ。


ECM 1317

Keith Jarrett (p)
Gary Peacock (b)
Jack DeJohnette (ds)

1. Stella by Starlight (Ned Washington, Victor Young)
2. The Wrong Blues (William Engvick, Alec Wilder)
3. Falling in Love with Love (Lorenz Hart, Richard Rodgers)
4. Too Young to Go Steady (Harold Adamson, Jimmy McHugh)
5. The Way You Look Tonight (Dorothy Fields, Jerome Kern)
6. The Old Country (Nat Adderley, Curtis Lewis)

Recorded July 2, 1985 at the Palais des Congrès Studio de la Grande Armée.

 

齊藤聡

齊藤 聡(さいとうあきら) 著書に『新しい排出権』、『齋藤徹の芸術 コントラバスが描く運動体』、共著に『温室効果ガス削減と排出量取引』、『これでいいのか福島原発事故報道』、『阿部薫2020 僕の前に誰もいなかった』、『AA 五十年後のアルバート・アイラー』(細田成嗣編著)、『開かれた音楽のアンソロジー〜フリージャズ&フリーミュージック 1981~2000』、『高木元輝~フリージャズサックスのパイオニア』など。『JazzTokyo』、『ele-king』、『Voyage』、『New York City Jazz Records』、『Jazz Right Now』、『Taiwan Beats』、『オフショア』、『Jaz.in』、『ミュージック・マガジン』などに寄稿。ブログ http://blog.goo.ne.jp/sightsong

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