杉田誠一 『Dino Saluzzi,Gidon Kremer,Andrei Pushkarev/Giya Kancheli:Themes From The Songbook』
『ディノ・サルーシ、ギドン・クレーメル、アンドレイ・プシュカレフ/ギヤ・カンチェリ:ソングブックのテーマ』
1969年、西独のマンフレート・アイヒャー(コントラバス奏者でもある)がECMを設立し、文字通りコンテンポラリー・ミュージックの “いま” を創り続けている。現代音楽というよりは、ぼくにとっては同時代に生きる「同時代音楽」と位置付けたい。
ECMのアーティストで1人あげるとすれば、ぼくは迷わずギドン・クレーメルをあげる。「琴線の触れ合い」なんてなまっちょろいものじゃなく、何度となく琴線がマジにぶっちぎれそうにすらなった。
「凄くなければ全くつまらない」といったのは、1960年、新藤兼人監督『裸の島』の主演 殿山泰司。いわゆるフリージャズに生きているといっていいひとで、60~70年代、よくライヴ・ハウスで出会う。高柳昌行 (g)、とか阿部薫 (as) とか、高木元輝 (ts,as,bc) とか。
「コルトレーン (ts,ss,fl,bs)、アイラー (ts,vo)、もちろんパーカーだって、ぼくのお気に入りは、すべからく “激しい人” 。 “激しくなければ” ジャズじゃないです」。『裸の島』はほとんどセリフのない映画だが、あの殿山泰司のセリフこそがジャズ以外の何ものでもないと思う。
「JoJoさんてジャズにこだわらないからいいですね。最近また、タンゴがおもしろくなってきた、っていってました。ピアソラのあの凄い “熱情” がゴキゲンだったって。」青山のカフェでジャズを語る殿山泰司。
ジョジョさんのアパートを初めて訪れたのも1969年である。アパートの扉に大きく貼り紙がある。
「もう一度考えなさい。ドアをノックするかどうか?」弟子入り志願が多いんですね。
ジョジョさん、しゃべりだしたらもうとまらない。
「ポンニチのズージャーなんて、根なし草のようなもんでしょ。まったく根付いちゃいないんだから」。
「凄いのは、ジャズやクラシックだけじゃないんだよ。
最近、南米の小説読んだんだけど、ガルシア・マルケスおもしろいよ。オペラも創ってるんだっていうからタダものジャないやね。」
「ズージャーってみんな、アメリカのことしか考えないけど、今、ソビエトや東欧、ポーランドあたりは、たまらない。なんてったって、いま夢中になってるのは、ギドン・クレーメルだね。」
ギドン・クレーメルは、ラトビア(リトアニア)のリガ出身。1947年2月27日生まれ。1981年独に亡命。
「まずは、“ストラトヴァリ” のタンゴを聴きたまえ!やはり、アストル・ピアソラだね。凄いぜ。」
ギドン・クレーメルは、殿山泰司、高柳昌行と同じく、激しく、熱情に生きる。
ECM 2188
Dino Saluzzi (Bandoneon)
Gidon Kremer (Violin)
Andrei Pushkarev (Vibraphone)
Jansug KakhidzeVoice (Conductor)
Tbilisi Symphony Orchestra
Recorded 1993-2010