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特集『ECM: 私の1枚』

市野元彦『Keith Jarrett Trio / Tribute』
『キース・ジャレット・トリオ/トリビュート』

ECMと言われれば本当にいろんなアルバムが思い浮かび、また影響も受けてきている訳ですが、聴いた回数が最も多くて思い出深いのはこの1枚(2枚組ですが)になります。

ジャズに触れ始めた当時に感じていた、よく分からないというか心を許しきれないというような感覚。言わば自分と音楽の間を隔てる壁のような距離感が全くなく、その歌心にスッと共感できた初めてのアルバムでした。

共感出来たと言ってもジャズを演奏し始めた当時の自分の耳にはどの曲も魔法のような演奏でしたが、長年聴き続けるにつれ3人のミステリアスな会話がだんだん分かってくるというような経験も出来たりと、色々と思い出深いアルバムです。

1曲目「Lover Man」の物語の始まりのような出だしや「All The Things You Are」の有名なテイクなど聴きどころは色々ありますが、今改めてミュージシャンとしての冷静な耳で聞くと曲調や曲順、テンポなどとてもバランスが取れたアルバムですね。


ECM 1420/21

Keith Jarrett (piano)
Gary Peacock (bass)
Jack DeJohnette (drums)

Recorded October 15, 1989, Philharmonie, Köln
Engineers: Jan Erik Kongshaug and O. Fries



●『Keith Jarrett / La Scala』(ECM1640)
キース作品ではちょうどボストンに留学していた頃に発売された『La Scala』も、毎日アパートで爆音で聴いてた思い出深い一枚です。音大の近くなのでアパートの隣人の部屋からも聴こえて来たりして。聴きながらぼーっと眺めていた汚い部屋の壁の質感まで思い出すような作品です。

●『Bill Frisell / In Line』(ECM1241)
ギターだと『Bill Frisell / In Line』は一番よく聴いた作品ですね。アリルド・アンデルセンとのデュオ。個性なんていう言葉が陳腐に響くような強烈な歌心。ギターでしか成し得ないけれど典型的なギターのサウンドとは全く違うという、彼の表現力に感嘆するしかない素晴らしい1stアルバムです。


市野元彦 いちのもとひこ
ギタリスト、作曲家。1968年兵庫県神戸市生まれ。Berklee College of Music卒業。Mick Goodrick等に師事。2001年に帰国後、首都圏ライブハウス等で活動を開始する。2007年ソロリーダー作『Sketches』、2008年『Time Flows (like water)』、2014年rabbitooの1stアルバム『national anthem of unknown country』を発表。同アルバムのフランス盤(naïve)がヨーロッパ市場に向けてリリースされ、フランスのテレビ局”MEZZO TV”のTop Mezzo of September 2014に選出されるなど国内外で高い評価を得る。2016年『the torch』、2020年、Sweet Herringboneの1st アルバム『After Ten』をbandcampにて発売。2021年にシングル『Flourish』を発売。現在はSweet Herringbone(元山ツトム/ 笠井トオル/ 山本達久)、螺旋の滴(佐藤浩一/福盛進也)、melodies(津上研太/外山明)など自己のプロジェクトのほかに、不定期にソロライブなども行なっている。メンバーとしては橋爪亮督 GROUP、渋谷毅DUO、小山彰太“幽玄郷”、水谷浩章“phonolite”、佐藤浩一“Embryo”などに参加。(Photo: Kosuke Mori)

【ライブ情報】 「melodies」
2023年5月22日(月) 荻窪 velvetsun
市野元彦 (g, baritone-g) 津上研太 (as) 外山 明 (ds)

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