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特集『ECM: 私の1枚』

瀬田創太『Keith Jarrett / Facing You』
『キース・ジャレット/フェイシング・ユー』

例えばこのCDが明日発売されたとして、
いーやいやいや、めっちゃやばい新感覚のピアニスト出てきたな、とジャズ業界に震撼が起きると思う。

キースジャレットのソロピアノと言えば『ケルン・コンサート』が筆頭に来る場合が多い。
僕もなんならそこからジャズに入ったのでドンピシャその一派だ。
が、今回は折角の機会なので(後、他の人と被ると少し照れくさいので)ケルン以外、となると真っ先に浮かんだのがこの『フェイシング・ユー』だ。

このアルバムで僕が1番背筋がゾワゾワするポイントは

これってどっからどこまで作曲してたの?
という点。

ちなみに僕は答えを知らないので全て想像だが、

たとえば、
実は全部全曲完全即興でしたー!と言われても納得できる。それくらい、決められたものを弾いてる感がめちゃくちゃ薄い。この先を知らずに手探りで進んでる感じが常にする。そしてその緊張感の継続がすごくやばい。

実はアイヒャー厳しかったんで結構書いて臨みましたー!
これも逆に納得できる。そのくらい緻密というか、構成に無駄がない上に刺激に満ちてて、トラック1の「in Front」なんてあまりに出来過ぎな展開。
ただしこちらの場合も、スケッチの上を薄くなぞれれば、まぁ拍子とかもその場でいいっしょ、というものすごい自由さも同時に感じる。

リアルブックには何曲か、このアルバムからピックアップされた譜面が掲載されてるものもあるので、キース自身が目を通してるかは置いといて、一応事前に少し書いたのかなと予想するが(ちなみにぶっ倒れるほど難しい。)、それにしてもどこをとっても名盤であることに間違い無いと思う。

自分の、もしくはバンドメンバーのオリジナルを演奏するときに、スタンダードほど自由度がない演奏になりがちなのは(あんまりキーとか拍子変えないよね)もしかするとジャズミュージシャン隠れあるあるなのかもしれないが、そんな負のスパイラルダンスに陥った時はこのアルバムに還って、そうだよなオリジナルでもこうやらなきゃだよな!ありがとうございます!
と、フレッシュな精神を取り戻したい。


ECM 1017

Keith Jarrett (Piano)

Recorded November 1971, Arne Bendiksen Studio, Oslo
Engineer: Jan Erik Kongshaug
Produced by Manfred Eicher


瀬田創太 せたそうた
ピアニスト、作編曲家。4歳からクラシックピアノを始め、18歳でケルンコンサートを聴いて衝撃を受けジャズの世界に入る。日々、音楽的な演奏を心がけて活動中。
公式ウェブサイト

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