米田泰久『Pat Metheny Group』
『パット・メセニー・グループ/思い出のサン・ロレンツォ』
それまでジム・ホールなどいわゆる “ジャズ・ギター” に馴染んでいた耳にはパット・メセニー・グループの音楽は録音も含めて衝撃と言えるほど新鮮だった。当時、よく仕事をしていたトリオレコードからサンプル盤をもらって聴いたのだった。1979年に「ECMスーパー・ギター・セッション ’79」が開催され、パット・メセニ・グループが初来日、取材を依頼され興奮した。パットはグループとしてのプレゼンテーションの完璧を期すため、サウンド・エンジニアとライティング・オペレーターを帯同してきていた。ジャズ系のバンドとしては初めてのパッケージとしての来日で新しい時代の到来を予感した。トリオレコードが派遣したビデオクルーと照明のことで揉めているのを目撃した。当時のビデオカメラの性能では照明が非常にシヴィアな条件だったのだろう。
翌年、パットがジャコ・パストリアスとリンカーン・センターのエイヴリ・フィッシャー・ホールでデュオ・コンサートをやるというので、招聘をもくろむTCPの亀川社長とトリオレコードの稲岡さんと3人でNYへ飛んだ。5番街を歩いていたら、なんとジャコが裸足で歩いてくるのに出会った。コンサートではジャコがアップライト・ベースを弾いたのには驚いた。2、3曲だったが。全体的にはジャコの気ままなベースにパットが合わせるという感じの流れだった。それでもさすがに二人の天才、充分刺激的でスリルに富んでいた。終演後、楽屋にはジャコのファミリーもいたが、ジャコがシャドー・ボクシングの真似をするなど始終、身体を動かしていた。稲岡さんが亀川さんとパットの間に入ってデュオの来日交渉をしていたが、パットがジャコの状態を懸念して来日は無理と判断したようだった。このコンサートの写真撮影は許可されたのだが、転居まもなくでアーカイヴにアクセスできないのが残念だ。しかし、取材した「スーパー・ギター」でのパットの甘く端正な顔立ちは伝えられたと思う。
ECM 1114
Pat Metheny (6- And 12-string Guitar)
Lyle Mays (Piano, Oberheim, Synthesizer, Autoharp)
Mark Egan (Bass)
Dan Gottlieb (Drums)
1 San Lorenzo (Lyle Mays, Pat Metheny) 10:14
2 Phase Dance (Lyle Mays, Pat Metheny) 08:18
3 Jaco (Pat Metheny) 05:34
4 Aprilwind (Pat Metheny) 02:09
5 April Joy (Pat Metheny) 08:14
6 Lone Jack (Lyle Mays, Pat Metheny) 06:41
Recorded January 1978, Talent Studio, Oslo
Produced by Manfred Eicher
米田泰久 よねだ “ライス” やすひさ
1949年、東京生まれ。
ジャズ写真家。コレクターとしても知られる。海外取材経験多数。
マイルス・デイヴィスの『We Want Miles』のカバー写真担当。