JazzTokyo

Jazz and Far Beyond

閲覧回数 1,623 回

特集『私のジャズ事始』

アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズ 岡崎正通

物心ついた中学生の頃は、ラジオに夢中でかじりついてヒットチャートをノートに書き留めては友達と好きな曲を自慢しあうような、どこにでもいるポップス小僧だった。初めて行った外タレ・コンサートは1959年暮れのトリオ・ロス・パンチョス。いま古ぼけてしまったノートを眺めてみると、大好きだったパンチョスやカテリーナ・ヴァレンテ、コニー・フランシス、ニール・セダカなどに混じって、15位くらいにアート・ブレイキーとジャズ・メッセンジャーズの<モーニン>が入っている週がある。長い演奏なのでラジオではいつも途中でフェードアウト。もっとも頭のテーマ部分はいいなと思ったものの、そのあとがまったく分からない。ジャズの魅力が即興にあることなど知らなかったし、そもそもアドリブなどという概念がまったくなかった。それでも粋がってジャズを聞き始めた友人に誘われるままに61年の1月、初来日したジャズ・メッセンジャーズのコンサートに行ってびっくり。世界中のカッコいいものがすべて集まっているようなステージに大興奮した。初めて意識して聞いた本物中の本物のジャズ。これがジャズなんだと分かってからは学生服のまま浅草橋の家の近所にあった、ほとんど真っ暗なジャズ喫茶「サウンド」に通ってロリンズ、マイルスや<レフト・アローン>なんかを聞きあさった。新宿や渋谷のジャズ喫茶に入り浸ったのは高校生になってから。以来60余年、数えきれないコンサートの中で素晴らしかったもの、感銘を受けたものは山ほどあるが、人生観を変えるような衝撃を受けたといえば、このときのジャズ・メッセンジャーズと66年のジョン・コルトレーン以上のものはない。


岡崎 正通(おかざき・まさみち)

1946年、東京生まれ。早稲田大学モダンジャズ研究会に入った学生時代から音楽雑誌等に寄稿。CD、LPのライナー解説をはじめ「Swing Journal」「Jazz Japan」「Jaz.in」「STEREO」誌などにレギュラー執筆。ビッグバンド “Shiny Stockings” にサックス奏者として参加。ミュージック・ペンクラブ・ジャパン会員。

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください