この1枚2016(海外編)#09 『Darcy James Argue’s Secret Society / Real Enemies』
text by Takehiko Tokiwa 常盤武彦
2016年度のベスト盤には、コンテンポラリー・ジャズ・ビッグ・バンドの流れの中で、ポスト・マリア・シュナイダーの最右翼、ダーシー・ジェイムス・アーギュー&シークレット・ソサエティの3年ぶりのアルバム『Real Enemies』を挙げたい。カナダ出身のアーギューがアメリカ民主主義の暗部を音楽で描いた大作だが、その持つ意味は11月のアメリカ大統領選挙を経て、さらに大きくなったと思う。2015年度のグラミー賞ベスト・ラージ・ジャズ・アンサンブル・アルバムにも前作に続き、2度目のノミネートを果たした。テッド・ナッシュ(as)、ジョン・ビーズリー(p)ら有力ライヴァルが並ぶが、ぜひ初受賞に期待した。アーギューが受賞すれば、近年、ペドロ・ジラウド(b)、クリストファー・ズアー(arr/comp)、挟間美帆(arr/comp,p)ら若い世代が擡頭し、活況を呈しているコンテンポラリー・ジャズ・ビッグ・バンド・シーンが、さらなる加速を見せるだろう。ベスト・コンサートも10月2日にブルックリン、ウィリアムスバーグのナショナル・ソウダストで開催された、同グループの、CDリリース・コンサートを選びたい。ビッグ・バンドのホーンが横一列に並び、サウンド、ヴィジュアル的にも圧倒的なパフォーマンスであった。2017年のコンテンポラリー・ジャズ・ビッグ・バンド・シーンも、注目したい。
下記CD Reviewを参照ください。
https://jazztokyo.org/reviews/cd-dvd-review/post-9639/
常盤武彦、ダーシー・ジェイムス・アーギュー、Darcy James Argue's Secret Secret Society