このCD2016(海外編)#08 『Silva Rasmussen Solberg / Free Electric Band』
For Tune 0101 066
Alan Silva (syn)
Mette Rasmussen (as)
Ståle Liavik Solberg (ds)
1. Free Electric Band
text by Akira Saito 齊藤聡
まずはメンバーの妙に少し驚く。フリージャズの闘士的な大ヴェテラン、アラン・シルヴァは、ベースではなくシンセサイザーを弾いている。さらにノルウェーのメテ・ラスムセンとストーレ・リアヴィーク・ソルベルグ。
ソルベルグは、最近、ジョン・ブッチャーとのデュオ『So Beautiful, It Starts to Rain』(clean feed、2015年)において、パルスでの分断によってブッチャーをそれに呼応した生き物へと変化せしめたのだが、ここでは、むしろシルヴァとラスムセンのプレイの間隙を埋め、ふたりのポテンシャルを高める効果を与えている。
特筆すべきことは、ラスムセンのアルトの多彩極まりない音色である。これには誰もが驚かされるに違いない。はじめは、幽霊のようなシルヴァのキーボードに合わせて抑制して震わせたり、フラジオで高音を攻めたり、アルトらしく闊達に吹いたりもしている。これだけでも十分と言うことができようものだが、30分前後になって、循環呼吸で長く吹くわけではないものの、エヴァン・パーカーを思わせるような多重らせんのマルチフォニックな音空間を提示する。その後、収束に向かって、尺八のような音色、さらに、尺八と金管楽器を混ぜ合わせたような音色をも展開する。
シルヴァも見事である。幽霊を思わせる音、光輝くクリスタルの音、ベースの音、それらがラスムセンのたいへんな才能と絡み合っている。
なお、ラスムセンは2017年5月に来日し、パーカッションのクリス・コルサーノと行動を共にする。傑作『All the Ghosts at Once』(Relative Pitch Records、2013年)をものしているふたりであり、とても楽しみにしている。
(文中敬称略)