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このディスク2016(国内編)No. 225

この1枚2016(国内編)#02 『高島正志、影山朋子、長沢哲、古池寿浩 / Astrocyte』

text by Narushi Hosoda 細田成嗣

Ftarri – meenna 987

高島正志:ドラムス、G.I.T.M.
影山朋子:ヴィブラプォン、パーカッション
長沢哲:ドラムス
古池寿浩:トロンボーン(2曲目のみ)

  1. Attractor (16:52)
  2. Action-Potential (29:51)

Track 1:高島正志 作曲
Track 2:即興演奏

2015年3月12日、東京「Ftarri」にてライヴ録音
録音・マスタリング:高島正志
アートワーク・デザイン:Cathy Fishman


近年の日本における新しい世代の即興演奏家たちにみられるひとつの傾向として、自作した電子機器をアコースティック演奏に取り入れながら、エレクトロ・アコースティックな組み合わせそのものに重点を置くのではなく、むしろエレクトロニクスの導入によって再認識されるような器楽の演奏性の捉え直しが、そうした組み合わせをきっかけとして行われていき、独特な器楽奏法を生み出していくところに興味関心を見出していくというところがあるように思う。自ら「G.I.T.M.(Ghost in the Marcy)」と命名したエレクトロニクス装置とドラムスを組み合わせた演奏を行う高島正志もまた、そうした取り合わせから捉え直された特異なドラミング――まるでグリッチ・ノイズを人力で体現するかのような響き――がみられる即興演奏家のひとりであると言えるだろう。作曲作品と即興演奏によるふたつのトラックが収録された本盤は、そうした彼の演奏家としてのありようを対比的な視座のもとに聴かせてくれる。作曲作品をトリオ編成で演奏した一曲めの<Attractor>では、影山朋子による揺らめくヴィブラフォンの響きのなかに、あたたかみのある長沢哲のドラムスと機械的な高島のドラムスという、対比的なふたつの打楽器が絡み合う様を聴かせてくれる。古池寿浩を加えたカルテットによる集団即興を収録した二曲めは、トロンボーンの持続する低音サウンドが合奏を立体的にすることによって、より一層激しくかつ小刻みに動き回る高島のドラムスが長沢との対比を際立たせている。本盤のリリース記念ライヴでは<Attractor>を古池も加わったカルテットによって披露してくれたが、まるでスピリチュアルなジャズ・ミュージックをも彷彿させたその演奏では、高島の人力グリッチ・ノイズ的なドラミングがより一層発揮されていたように思う。この楽曲は局面に応じてまだまだ新たな音楽に化けることがあるのかもしれない。本盤はそうしたポテンシャルを秘めた作曲センスを併せ持つ特異な即興演奏家が浮上した重要な一枚だといえる。

細田成嗣

細田成嗣 Narushi Hosoda 1989年生まれ。ライター/音楽批評。2013年より執筆活動を開始。編著に『AA 五十年後のアルバート・アイラー』(カンパニー社、2021年)、主な論考に「即興音楽の新しい波──触れてみるための、あるいは考えはじめるためのディスク・ガイド」、「来たるべき「非在の音」に向けて──特殊音楽考、アジアン・ミーティング・フェスティバルでの体験から」など。2018年より「ポスト・インプロヴィゼーションの地平を探る」と題したイベント・シリーズを企画/開催。

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