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このパフォーマンス2016(国内編)No. 225

このコンサート/ライヴ2016(国内アーティスト)#05 Solitude/石井彰 ピアノ・ソロ・コンサート 東京オペラシティ リサイタルホール 

東京オペラシティ リサイタルホール

text & photo by Yumi Mochizuki 望月由美

2016年11月17日(木)
東京オペラシティ リサイタルホール

石井彰(p)

今年で12回目を迎えた石井彰のピアノ・ソロ・コンサートが今回は東京オペラシティのリサイタルホールで行われた。

座席数265席というソロ・ピアノにはちょうど良い大きさのホールで久しぶりにPAなしのアコースティックなピアノの響きに浸ることができた。
響きのよいピアノとホールにこだわる石井はこれまでに白寿ホール、王子ホール、代官山ヒルサイドプラザなど音のよいホールでベーゼンドルファーやスタインウエイのピアノに自分の年輪を刻んできた。

「ソリチュード」と銘打った今回はモンクの『ヒムセルフ』やエヴァンスの『ハウ・マイ・ハート・シングス』で慣れ親しんできた<アイ・シュッド・ケア>からスタートしたがこの一曲で会場にリラックスしたムードが広がる。
会場はなんども石井のソロ・コンサートを聴き続けてきた人も多く見受けられ、そうした客席の空気を読んだ石井の選曲の巧みさが光る。
つづけてレイ・ブライアントの<リフレクション>、レイ・ブライアントのプレイやフィニアス・ニューボーンのファンキーな演奏が頭に浮かぶが石井はクールにさらっとかわす。

この2曲で会場にインティメイトな雰囲気をつくったところでこの夜のテーマと思われるエリントン・ナンバーを2曲演奏し、<インヴィテイション>で熱くなった客席の熱を冷ますかのように一部を終了する。
曲のつながり、流れがスムーズで、実にスマートな選曲である。

2部もイヴァン・リンスやモンク、エリントン、ヘイデンなどの巨匠たちの名曲を石井流にインプロヴァイズしアコースティック・ピアノの美しさを表現してくれた。

石井はCDからインターネットのダウンロード配信へと音楽表現の場が拡張して行く流れに対応して今年の春、ソロ・ピアノ演奏のハイレゾ配信を試みている。ディジタルに弱い筆者はまだ聴いていないが、リストを見るとそのハイレゾ配信の曲の中に<ソリチュード>や<プレリュード・トウ・ア・キス><A列車で行こう>といったエリントン・ナンバーが入っているしこのコンサートでもエリントン・ナンバーが3曲演奏された。
30年近い音楽人生を送ってきた石井が今の自分と向き合うときの重要な接点が<ソリチュード>に代表されるエリントンなのかな、と思える演奏であった。

2005年からあしかけ12年間途切れることなく続いている石井彰のピアノ・ソロ・コンサート。
近年、ライヴ・ハウスでの演奏の場は増えているように感じるがコンサート・ホールでの演奏の機会がとりわけ日本人アーティストにとってはむしろ減ってきているように感じる。
そうした演奏環境の中で石井彰のピアノ・ソロにかける情熱とそれを支えてプロモートするプロデューサー、スタッフの熱意によって長期にわたって継続していることに敬意を表して2016年このコンサート(国内の部)に選ばせていただいた。

セット・リスト
1部
1.I should care(Axel Stordahl, Paul Weston&、Sammy Cahn)
2.Reflection(Ray Bryant)
3.I let a song go out of my heart(Duke Ellington)
4.Solitude(Duke Ellington)
5.Invitation(B.Kaper)
2部
1.Aos Nossos Filhos(Ivan Lins)
2.Setembro(Ivan Lins)
3.Bluesphere(Thelonious Monk)
4.Autumn leaves(Mercer-Kosma-Prevert)
5.I got it bad(Duke Ellington)
6.La passionare(Charlie Haden)
アンコール
Danny boy(Traditional)

 

 

望月由美

望月由美 Yumi Mochizuki FM番組の企画・構成・DJと並行し1988年までスイングジャーナル誌、ジャズ・ワールド誌などにレギュラー執筆。 フォトグラファー、音楽プロデューサー。自己のレーベル「Yumi's Alley」主宰。『渋谷 毅/エッセンシャル・エリントン』でSJ誌のジャズ・ディスク大賞<日本ジャズ賞>受賞。

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