このライブ/このコンサート2016(国内アーティスト)#06 『白石民夫、新宿西口カリヨン橋』
2016年6月3日、12日 新宿西口カリヨン橋
白石民夫 (as)
後飯塚僚 (vl)(6月12日のみ)
text and photos by Akira Saito 齊藤聡
2015年に続き、ニューヨークで活動する白石民夫が、新宿駅西口ビックカメラ前の陸橋・カリヨン橋の上で、夜の22時からアルトサックスを吹いた。
6月3日。
白石民夫のアルトは猛禽類の叫びのようだ。西口の空に、街に、キキキキキという甲高い音が突き刺さった。
途中でリードを交換し、次のブロウに向けて想いを集中させる氏。心の流れによるものなのか、それとも西口のクルマの音やカリヨン橋を酔って談笑しながら通り過ぎる人々の声に触発されてのものなのか、途中で明らかに潮目が変わった。昨年聴いたときには情念よりも抽象だと思った。しかし今は、情念によるアジアのブルースが身悶えしていた。
わずか20分ほどの特異点だった。
6月12日。
曇り空に突き刺さる鋭い高音の断片群。先週とはまた違い、より聴く者の心をダイレクトに抉るものだった。そしてヴァイオリンの後飯塚僚も加わり、背後で、微分的で独立的な音を発した。
その作用なのか、白石民夫も自ら痙攣するようにして、30分もの間、新宿を裂いた。
(文中敬称略)