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このディスク2016(海外編)No. 225

この1枚2016(海外アーティスト)#12 『Glauco Venier / Miniatures: Music for piano and purcussions』

『Glauco Venier / Miniatures: Music for piano and purcussions 』(ECM 2385)
『グラウコ・ヴェニエル/ミニチュアズ:ピアノと打楽器のための音楽』

text by Hideo Kanno 神野秀雄

Glauco Venier: piano, gongs, bells, metals
Ritual (Glauco Venier)
Tiziano’s Painting (Glauco Venier)
No. 40 (Georges I. Gurdjieff, Thomas de Hartmann)
Byzantine Icon (Glauco Venier)
Serenity (Glauco Venier)
Abstractio (Glauco Venier)
Prayer (Glauco Venier)
Gunam (Alessandra Franco)
Madiba (Glauco Venier)
The Temple – War – Litanies (Glauco Venier)
Krunk (Komitas Vardapet)
Ave Gloriosa Mater Salvatoris (Anonymus C13)
Visible Spirit (Glauco Venier)
Deep and Far (Glauco Venier)
Ce Jour de L’an (Guillaume Dufay)

Recorded December 2013 at Auditorio Stelion Molo RSJ, Lugano
Engineer: Stefano Amerio
Cover photo: Jan Kricke
Liner photos: Glauco Comoretto
Cover Design: Sascha Kleis
Produced by Manfred Eicher

Release: June 2016

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ノーマ・ウィンストン・トリオのメンバーとして、ドイツ出身イタリア在住のクラウス・ゲシング(ss, bcl)とともに毎年来日しているイタリアのピアニスト、グラウコ・ヴェニエル。ECMではノーマ・ウィンストン・トリオで3作品を録音しており、『Miniatures』はECMにおける最初のソロアルバムとなる。

豊かな色彩感と独特のタイム感のピアノで奏でられる美しいメロディとハーモニーに、ゴング、シンバルをはじめメタリックな打楽器が、ときに木質の打楽器が重なり、グラウコが自然から受け取ったリズムや響きを表現して行く。ピアノの録音に打楽器を多重録音で重ねたのではなく、写真を見るとピアノから手の届くところに打楽器群を配して、同時に奏でて行く。YouTubeを探すと残響のある教会のような建物で、ピアノと打楽器を同時に一人で演奏するソロ・コンサートとして開催している。多少は多重録音も使っているとは思うが、確かに金属弦のピアノの響きと金属系打楽器の響きが空間で交じり合うこと目指すなら、グラウコにとって多重録音ベースでアルバムを作っても意味がないのだろう。

グラウコは、1962年フリウリ地方ウディーネ生まれ、アドリア海に近く、オーストリア、スロヴェニア(旧ユーゴスラヴィア)と国境を接し、クロアチアもすぐそこ、近隣の都市トリエステはハプスブルグ帝国などと長く帰属を巡って争われて来た。最近、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、オーストリアと旅し、この領域の美しい風景、暖かい人柄と、難しい歴史を実感して来た。そんな中で、グラウコの音楽原体験は、自然の音と、教会のオルガンとその残響であり、ウディーネ音楽大学をオルガンで卒業し、メシアンまでを研究した。

『Miniatures』での音は、いわゆる金属的な冷たい透明な感覚と合わせて、おそらくノイズ的な性質に起因する、どこかに風のような、森のような暖かく包まれる感覚が共存し、それはグラウコの陽気さとまじめさと繊細さが共存する印象と見事に繋がる。また、グラウコが、ソロ・ピアノの輝かしい伝統を持つECMで自分に何ができるかと考えたというのも納得する。穏やかな時間の流れと緊張感の中にグラウコの美意識が確実に表現され、ECMの中にあっても極めて密度の高い作品となっている。

なお、「この1枚」にソロアルバムを選んだが、ジャズのインタープレイの極致としては、『Joshua Redman and Brad Mehldau / Nearness』を挙げておきたい。こちらは、ブルーノート東京のライブ・レポートの解説をご参照いただきたい。

https://www.jazztokyo.org/reviews/live-report/post-11491/

 

 

© Glauco Comoretto, ECM Records                      © Glauco Comoretto, ECM Records

 

【関連リンク】

ECM Player – Glauco Venier / Minuatures

http://player.ecmrecords.com/venier-2385/home

ECM Records

https://www.ecmrecords.com/catalogue/1464082058/miniatures-glauco-venier

 

【JT関連リンク】

及川正生の聴きどころチェック

https://www.jazztokyo.org/reviews/kimio-oikawa-reviews/post-8168/

Norma Winstone – Winstone / Gesing / Venier Trio at Shinjuku Pit Inn 2015

https://jazztokyo.org/reviews/live-report/

http://www.archive.jazztokyo.org/best_cd_2014b/best_live_2014_inter_04.html

『Norma Winstone /Dance Without Answer』

http://www.archive.jazztokyo.org/five/five1096.html

「ECM: 沈黙の次に美しい音」展(ソウル)

http://www.archive.jazztokyo.org/live_report/report574.html

 

 

神野秀雄

神野秀雄 Hideo Kanno 福島県出身。東京大学理学系研究科生物化学専攻修士課程修了。保原中学校吹奏楽部でサックスを始め、福島高校ジャズ研から東京大学ジャズ研へ。『キース・ジャレット/マイ・ソング』を中学で聴いて以来のECMファン。Facebookグループ「ECM Fan Group in Japan - Jazz, Classic & Beyond」を主催。ECMファンの情報交換に活用していただければ幸いだ。

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