#06 ルイス・フェルナンド・ペレス アルベニス<イベリア> 全曲演奏
Luis Fernando Perez – Iberia (Isaac Albéniz)
text by Hideo Kanno 神野秀雄
photo by © team Miura チーム三浦 (冒頭の写真)
ラ・フォル・ジュルネTOKYO 2018 「モンド・ヌーヴォー 新しい世界へ」
La Folle Journée TOKYO 2018 “Un Monde Nouveau”
2018年5月2日 19:30 & 21:00 東京国際フォーラム ホールB5 (M236/M237)
ルイス・フェルナンド・ペレス Luis Fernando Perez, piano
イサーク・アルベニス (1860-1909): 組曲<イベリア>, 4巻 12の新しい印象, B47 (1905-1908)
Isaac Albéniz: Iberia, 12 nouvelles impresiones en cuatro cahiers, B47 (1905-1908)
第1巻 Cuaderno 1
エボカシオン Evocación
港 El Puerto
セビリアの聖体祭 Corpus-Chrisi en Sevilla
第2巻 Cuaderno 2
ロンデーニャ Rondeña
アルメーリア Almeria
トゥリアーナ Triana
第3巻 Cuaderno 3
エル・アルバイシン El Albaicin
エル・ポロ El Polo
ラバピエース Lavapiés
第4巻 Cuaderno 4
マラガ Málaga
ヘレス Jerez
エリターニャ Eritaña
フレデリック・モンポウ(1893-1987):「子供の情景」から「庭の乙女たち」
Frederic Mompou Dencausse : Scènes d’enfants “Jeunes filles au jardin”
アントニオ・ソレール(1729-1783):ソナタ 二短調
Antonio Soler: Sonata D minor
ルイス・フェルナンド・ペレスは、1977年、マドリッド生まれ。レイナ・ソフィア・シニア音楽学校を経て、ケルン音楽大学でジャン・フィリップ・エマールに師事。最近のラ・フォル・ジュルネ(LFJ)での常連ピアニストのひとりだ。大胆かつ繊細の演奏に、そしてその笑顔と人柄とともに多くのファンを持つ。
<イベリア:12の新しい印象>は、カタルーニャのフランス国境近くに生まれた作曲家イサーク・アルベニス(1860-1909)の晩年を代表するピアノ組曲であり遺作。同世代のドビュッシーが絶讃したと言うが、ドビュッシーやラヴェルがスペインにインスパイアされて名曲を残し、アルベニスにも共通する響きを感じるものの、芯となるスペイン魂の発現ではアルベニスを超えられない。また、<イベリア>がギターに編曲され好んで演奏されるということは、ピアノでスペインを描く難しさの表れでもある。LFJ 2018のテーマは「モンド・ヌーヴォー 新しい世界へ」(原案では「亡命」)なので、スペインに生まれ、パリに居を定めて活躍したアルベニスが取り上げられた。LFJナントでは、2月3日にナント国際会議場のお向かいの建物のCIC Ouestで全曲演奏が行われた。東京のLFJ 2013でも<イベリア>全曲演奏している。また、<イベリア>、<ナバーラ>の録音によりアルベニス・メダルを授与されている。
アルベニスが亡くなる前の数年間に遥か故郷スペインを想い渾身で書き上げた傑作であり、ピアニストにとっての難曲である<イベリア>。そこに描き込まれたアンダルシアやマドリッドの空気感と色彩を巧みに、多様に表現するの力量、ダイナミックレンジの広さと、溢れ出るグルーヴ、繊細さと大胆さを兼ね備え、情熱と力強さに溢れた演奏に圧倒された。イベリアの大地が持ち、人々が育んで来た魂、ヴァイブレーションのようなものが演奏からダイレクトに伝わるような特別な体験だった。
ピアニストが燃え尽きるような全曲演奏の後、アンコールで演奏されたモンポウの美しいハーモニーと輝くような音色のつくりだす世界に包まれる。そして、ダブルアンコールは、ソレールのソナタで快活でありながら安らぎを覚える演奏で締め括った。
LFJ 2019のテーマは「Carnets de Voyage 旅から生まれる音楽」(ちなみに、Voyageなだけに、挾間美帆が『Herbie Hancock / Mayden Voyage』でLFJナント本家デビューを果たす)。ルイス・フェルナンド・ペレスは、LFJナントで、2月2日に<イベリア>から抜粋で1公演で演奏する。LFJ東京 2019でも演奏されることになれば、発売開始後、速攻でチケットを入手することをお勧めしたい。