#07 『ダフニス・プリート』
text by Keiichi Konishi 小西啓一
「2018年 今年の1枚」だが、ぼくの個人的趣味でまたまた認知度の低い(と思われる)ラテン・ジャズの分野から…。アルバムはラテン・ジャズ界きってのドラマー(手数王)と目されるダフニス・プリートの新作『バック・トゥ・ザ・サンセット』。このアルバムが発表されると聞いて、是非手に入れねばと思った1枚で、その理由としてはまず彼が結成したフル・バンド(今や時代の波はラージ・アンサンブル~フル・バンド)の初アルバム(自身のレーベル)だと言うこと。さらに何とあのヘンリー・スレッギル、スティーブ・コールマンといった、ぼくが最も敬愛するサックス奏者が1曲ずつゲスト参加していること。プリートのフル・バンドにスレッギル、コールマン。こんな異色にして胸躍る顔合わせが、まさか実現するとは…、流石にシーンを背負って立つプリートならではである。もうこれだけで充分に推薦に価するのだが、メンバーもロベルト・キンテーロ、リッキー・ロドリゲス、マニュエル・バレラなど、まさに豪華絢爛で一騎当千の面々。このアルバムについては以前CD紹介欄で悠雅彦氏が取り上げていたので、詳しい内容などはそちらを参照していただければと思うが、全9曲が彼のオリジナルであり、それぞれがゲストのスレッギル、コールマンを始め、ティト・プエンテ、エディー・パルミエリといった大物からアート・ブレイキー、ディジー・ガレスピー、ジェーン・バーネットといったジャズとラテンの融合に力のあったジャズメン達に捧げられており、その目配りの細かさ・確かさ、またラテン・ジャズ特有の悦楽性と躍動感、先進性などが見事にマッチングしている点など、今年のベストに価する内容として推奨したい。皆様も是非一度耳を傾けてみてください。