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このディスク2019(海外編)No. 261

#10 『Peter Lemer Quintet – Son of Local Colour: Live at the Pizza Express, Soho』

text by Nobu Stowe

ESP Records #5031

Peter Lemer (piano)
Alan Skidmore (tenor saxophone)
John Surman (baritone and soprano saxophones)
Tony Reeves (double bass)
Jon Hiseman (drums)

1.Ciudad Enahenado
2.Ictus
3.Flowville
4.Carmen
5.Impressions
6.Big Dick
7.URH
8.In the Out

Compositions by Peter Lemer, except “Ictus” (Carla Bley), “URH” (John Surman), and “Impressions” (John Coltrane).

Recorded February 20, 2018 @ the Pizza Express Jazz Club (Soho, London, UK)
Recording Engineer: Miles Ashton
Mixing and Mastering Engineer: Ru Lemer
Produced by Peter Lemer


ピーター・リーマー率いるクウィンテットの50年ぶり、一夜限りの復活ライブ作。ピーターは、最近亡くなったジンジャー・ベイカーds等のバンドで、主に60~70年代の英ロックシーンで活躍したピアニスト。しかし、同一メンバーによる初リーダー作『Local Colour』は、本作と同じく前衛ジャズの聖地ESPより1968年1月に発売された。ポール・ブレイが提示した幽玄の世界を、個性豊かなメンバーに支えられ、多少粗削りながらも独自発展させた作品だった。対するこのリユニオン作品は、熟練ならではの旨味ともに、久々に顔を合わせた旧友同士のフレッシュな息吹も感じられ、かなりの出来に仕上がったと思う。1966年に録音された前作は、ジョン・サーマンの処女録音らしいが、本作品は、録音4か月後に脳腫瘍で亡くなってしまったジョン・ハイズマンの遺作になってしまった。ハイズマンと言えば、英屈指のドラマーで、名ジャズ=ロック・グループ『コロシアム』のリーダーだが、そのベース奏者=トーニー・リーブスも前作に引き続き参加。彼は、僕の大好きなプログレバンド『グリーンスレード』にも入って、最近音沙汰が無かったので、元気なプレイは嬉しい。当時60~70年台のイギリス・シーンが面白いのは、彼らのような才能あるミュージシャンが、ジャズやロックという垣根を自由に超えた活動をしていたからでしょう。因みに『Local Colour』のテナーは、後にマイク・ウェストブルック等のバンドで活躍したNisar Ahmed Khanだが、今回は、体調が悪く不参加。この再結成には、代わりに何とアラン・スキッドモアが参加。強力リズムセクションに煽られて、久しぶりにサーマンとスキッドモアが、熱いバトルを繰り広げるトレーンの〈インプレッションズ〉一曲だけでも、買う価値大です!

*『Peter Lemer Quintet – Son of Local Colour』は、アマゾン/ディスク・ユニオン等で購入可能。

須藤伸義

須藤伸義 Nobuyoshi Suto ピアニスト/心理学博士。群馬県前橋市出身。ピアニストとして、Soul Note(イタリア)/ICTUS (イタリア)/Konnex(ドイツ)の各レーベルより、リーダー作品を発表。ペーリー・ロビンソンcl、アンドレア・チェンタッツォcomp/per、アレックス・クラインdrs、バダル・ロイtabla他と共演。学者としての専門は、脳神経学。現在スクリプス研究所(米サンディエゴ)助教授で、研究室を主宰。薬物中毒を主とするトピックで、研究活動を行なっている。

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