#01 音楽と風景の時間
2019年9月18日(水) 渋谷公園通りクラシックス
text by 安藤誠 Makoto Ando
沢田穣治=コントラバス、ピアノ
馬場孝喜=ギター
山田あずさ=ヴィブラフォーン
沼直也=カセットドラムス
浅野達彦=映像、サウンドデザイン、ギター
この日のライヴは、ショーロクラブのコントラバス奏者にして、南米音楽からポップス、ジャズ、即興まで縦横無尽に活動の場を拡げている沢田穣治cbと、かねてより彼と音楽的交流の深い馬場孝喜g、山田あずさvib、沼直也drに、ギターとビジュアル担当の浅野達彦が加わるという興味深い顔ぶれ。2019年に入り下北沢lete等で沢田とのデュオを重ねている浅野は、東京藝術大学で絵画を専攻しながら音楽家への道を選択したという異能のギタリスト。様々な音響制作に携わりながら2005年にはデヴィッド・シルヴィアンのリミックス・アルバム『Blemish Remixes』に参加するなど、内外で実績を重ねている。
ケレン味やテクニックの誇示とは一切無縁ながら、プレイヤーそれぞれの奥行きを否が応でも感じさせる円熟味に満ちた4人の演奏に、浅野が所々ジョン・フェイヒーやビル・フリゼールを想起させるギターで、はるか上方から深海に降りてくる薄い太陽光のような効果を付加していく。ファンタジックかつイマジネーション溢れるドローイングや写真からなる、ざらついた感覚の特異なビジュアルとも相俟って、渋谷の喧騒のなかに突如立ち現れた蜃気楼を目撃したかのような、貴重な時間が体験できた。今回のみのアドホックな組み合わせであることは承知しているものの、個人的に今年観た中では最も次回を期待したくなるライヴだった。