JazzTokyo

Jazz and Far Beyond

閲覧回数 35,932 回

このパフォーマンス2019(海外編)No. 261

#09 アングイッシュ Anguish(ウィル・ブルックス、マッツ・グスタフソン、ハンス・ヨアヒム・イルムラー、マイク・メア、アンドレアス・ヴェリーン)

2019年 6月10日 メールス ・フェスティヴァル
June 10, 2019 @Moers Festival

text and photo by Kazue Yokoi  横井一江

アングイッシュ  Anguish 
ウィル・ブルックス  Will Brooks (voc)
マッツ・グスタフソン  Mats Gustafsson (ts)
ハンス・ヨアヒム・イルムラー  Hans Joachim Irmler (synth, voc)
マイク・メア  Mike Mare (g, elec)
アンドレアス・ヴェリーン  Andreas Werliin (dr)


たぶんメールス に行かなければこのユニットを聴くこともなかったし、興味を持つこともなかったと思う。「アングイッシュ」はヒップホップ・グループ dälek  のウィル・ブルックスとマイク・メアに、クラウトロック・バンド「ファウスト」のメンバーだったハンス・ヨアヒム・イルムラー、そしてマッツ・グスタフソン、彼の「ファイアー!オーケストラ」のメンバー、アンドレアス・ヴェリーンで結成されたユニット。2018年にCD『ANGUISH』(RearNoise Records)をリリースし、2019年にヨーロッパをツアーしたが、その最初のコンサートがメールス ・フェスティヴァルだった。ヒップホップ、クラウトロック、フリージャズと異なるバックグラウンドをもつ5人が出会うことで音楽表現の可能性が広がったといえる。本会場の最終ステージに登場した彼らのダークでノイジーな音塊から現代を表象するようなディストピア感が迫ってきた。ウィル・ブルックスのリリックが谺し、マッツ・グスタフソンの破壊的なブローに吹き飛ばされそうになる。世界的に近代の枠組み、西欧のリベラルな価値観が揺らいでいるとしか感じ得ない日々、それに伴う漠然とした不安感、不穏感が漂う現在のリアリティ、それを体現したサウンドだった。どの程度意識しているかいないかはあるにせよ、エッジなミュージシャンは時代の空気を受け止めながら演奏している。半世紀前にフリージャズを演奏していた面々と同じように。

 

スライドショーには JavaScript が必要です。


【関連記事】

メールス・フェスティヴァル 2019
https://jazztokyo.org/monthly-editorial/13-moers/

Moers Festival 2019 ~ Photo Document Part 1
https://jazztokyo.org/column/reflection-of-music/moers-photo-1/

Moers Festival 2019 ~ Photo Document Part 2
https://jazztokyo.org/column/reflection-of-music/moers-photo-2/

Moers Festival 2019 ~ Photo Document Part 3
https://jazztokyo.org/column/reflection-of-music/moers-photo-3/

横井一江

横井一江 Kazue Yokoi 北海道帯広市生まれ。音楽専門誌等に執筆、 雑誌・CD等に写真を提供。ドイツ年協賛企画『伯林大都会-交響楽 都市は漂う~東京-ベルリン2005』、横浜開港150周年企画『横浜発-鏡像』(2009年)、A.v.シュリッペンバッハ・トリオ2018年日本ツアー招聘などにも携わる。フェリス女子学院大学音楽学部非常勤講師「音楽情報論」(2002年~2004年)。著書に『アヴァンギャルド・ジャズ―ヨーロッパ・フリーの軌跡』(未知谷)、共著に『音と耳から考える』(アルテスパブリッシング)他。メールス ・フェスティヴァル第50回記。本『(Re) Visiting Moers Festival』(Moers Kultur GmbH, 2021)にも寄稿。The Jazz Journalist Association会員。趣味は料理。当誌「副編集長」。 http://kazueyokoi.exblog.jp/

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください