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R.I.P. エンニオ・モリコーネNo. 268

映画『アンタッチャブル:The Untouchables』

text by Yoko Takemura 竹村洋子

エンニオ・モリコーネが音楽を担当した、ブライアン・デ・パルマ監督による、1987年の作品。
1930年代のアメリカ、シカゴを舞台に、正義のためにギャングのボス、アル・カポネを逮捕しようとするアメリカ合衆国財務省捜査官達のチーム「アンタッチャブル」の戦いの日々を描いた映画。
禁酒法時代のシカゴを見事に再現した美術、個性的な俳優陣、ジョルジュ・アルマーニによる見事なコスチューム、エンニオ・モリコーネの音楽など、どれを取っても超一級の作品に仕上がっていた。
映画は捜査チームの主任捜査官だったエリオット・ネス役のケヴィン・コスナー、脇役のショーン・コネリーとアンディ・ガルシアらの熱演が素晴らしく、この作品によリコスナー、ガルシアはハリウッド・スターの仲間入りをした。また、シカゴ・ユニオン・ステーションの大階段のシーンは圧巻で、最初から最後まで息つく暇もない見事な作品だった。

が、何と言っても筆者が感動したのは、エンニオ・モリコーネの音楽だった。
モリコーネは映画ファンのみならず、もはや世界中の多くの人達に知られた映画音楽を中心とした大作曲家だった。映画の事を知らずとも、どこかでモリコーネの音楽を耳にした人は数多いと確信する。
映画は作品の構想、脚本、監督、俳優の演技、撮影、美術、音楽など、多くの要素を統合した娯楽作品であると共に『総合芸術』であると思う。その中でも『音楽』が映画の中で果たす役割は極めて大きく、難しくもあるだろう。
映画に於いて音楽は『脇役』であり『映画を引き立て補強するもの』でなくてはならない。映画の主題と音楽との相性は極めて重要だ。良い音楽は映画を必ず引き立てる。『アンタッチャブル』はその事を、筆者に痛烈に感じさせてくれた。

映画冒頭、全体のストーリー展開を予見させるようなテーマ音楽にはゾクゾクさせられ、穏やかな家庭を描いたシーンや捜査官マローンが亡くなるシーンでは美しく静かなバラードを、郊外での活劇シーンではオーケストラの演奏が俳優陣の動きを一層盛り上げ、捜査シーンやクライマックスのシカゴのユニオン・ステーションの大階段でのシーンでは聴衆に恐怖感を煽るような効果音に近い音楽で映画をさらに盛り上げて行く。そして、映画後半、犯罪者を追い詰めるシーンでは映画冒頭に使われたゾクゾクするリズムの音楽が再度使われる。その場面場面に合った音楽とメリハリの付け方も素晴らしかった。映画の主題とモリコーネの音楽のマッチングはパーフェクト、と感動した。

ブライアン・デ・パルマ監督の総指揮下で創られたとは言え、監督とも息が合っていたのは間違いない。モリコーネは、脇役として出過ぎず映画を引き立て、出るべき所はしっかり出る。筆者にとっては、映画を観た後にストーリー(場面)と音楽が同時に心に残る数少ない映画の1本だった。モリコーネは映画とはどうあるべきかを知り尽くし、真に映画を愛した偉大な芸術家だった。R.I.P.

『アンタッチャブル』
1987年グラミー賞受賞。第60回アカデミー賞主演男優賞(ショーン・コネリー)、作曲賞、美術賞、衣裳デザイン賞ノミネート。英国アカデミー賞作曲賞受賞、1988年ナストロ・ダルトン賞(伊)作曲賞受賞。

竹村洋子

竹村 洋子 Yoko Takemura 桑沢デザイン専修学校卒業後、ファッション・マーケティングの仕事に携わる。1996年より、NY、シカゴ、デトロイト、カンザス・シティを中心にアメリカのローカル・ジャズミュージシャン達と交流を深め、現在に至る。主として ミュージシャン間のコーディネーション、プロモーションを行う。Kansas City Jazz Ambassador 会員。KAWADE夢ムック『チャーリー・パーカー~モダン・ジャズの創造主』(2014)に寄稿。Kansas City Jazz Ambassador 誌『JAM』に2016年から不定期に寄稿。

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