JazzTokyo

Jazz and Far Beyond

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このディスク2020(海外編)No. 273

#05 『アントニオ・アドルフォ/ブルーマ〜ミルトン・ナシメントに捧ぐ』
『Antonio Adorfo / BruMa』

text by Keiichi Konishi 小西啓一

恒例の“Jazz Tokyo”今年の1枚 である My Pick(洋楽編)、またまたジャズの本道ではないラテン・ジャズ、ブラジリアン・ジャズなどの ”アラウンド・ジャズ“ から選出することに…。今年もまた色々な魅力的なアルバムが登場したが、ぼくのお勧めはポルトガルのリスボン在住の実力派シンガー、カルメン・ソウザのホレス・シルバー集、ぼくのお気に入りのキューバを代表する精鋭ピアニスト、ハロルド・ロペス・ヌッサの『テ・ロ・ディジェ』、そしてブラジルのベテラン・ピアニスト、アントニオ・アドルフォの快作=同地の英雄ミルトン・ナシメント集『ブルーマ』といったあたりか…。
まず最初のカルメン・ソウザは、本国では既に10枚近くの作品を発表している実力派シンガーで来日経験もありだが、前作が初めての邦盤になる。今作は両親の故郷である大西洋の島、カポ・ベルデの大先輩になるあの偉大なジャズ・ピアニスト、ホレス・シルバーのお馴染みのナンバーを取り上げたもので、ようやく日本のファンにも認知を得た感あり。キューバ、ブラジル、アフリカ等、諸要素が入り混じった”パン・アトランティック” サウンドが展開され実に心地良い。ハロルドは“ブルーノート東京”への数度にわたる登場で、日本のファンにもすっかりお馴染みの存在。自身の子供(?)の声なども効果的に挿入、いかにも今が旬とでも言えそうな生きの良いキューバン・ジャズ・サウンドが全編繰り広げられる。そしてブラジリアン・ジャズきっての大物ピアニスト、アントニオのナシメント集は本誌でも既に紹介している(#271)、彼の集大成とも言えそうな快作。邦盤が出ていないため残念なことに余りその実力が知られていないアドルフォだが、ブラジル音楽の全てに通じた感もある広範な守備範囲を誇るピアニスト&コンポーザー。その数多いアルバムはどれも素晴らしいもので、今作については“Jazz Tokyo”のぼくのレビューを読んで欲しいが、今回は彼の功績を称える意味でも、今年のベスト作に推奨したい。”ブラジルの心”とも呼ばれる国民的歌手、ミルトン・ナシメントの唄心が見事なジャズに昇華された快作。確か今年度のグラミー賞ラテン部門でも高く評価されている筈はずだ。

小西啓一

小西啓一 Keiichi Konishi ジャズ・ライター/ラジオ・プロデューサー。本職はラジオのプロデューサーで、ジャズ番組からドラマ、ドキュメンタリー、スポーツ、経済など幅広く担当、傍らスイング・ジャーナル、ジャズ・ジャパン、ジャズ・ライフ誌などのレビューを長年担当するジャズ・ライターでもある。好きなのはラテン・ジャズ、好きなミュージシャンはアマディート・バルデス、ヘンリー・スレッギル、川嶋哲郎、ベッカ・スティーブンス等々。

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