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R.I.P. 林 聡No. 320

Utsunomia MIXと林聡氏 宇都宮 泰

私がsaraさんに招聘され初めてノマルを訪れたのが2022年10月15日、K2/草深公秀氏とsaraさんのライブ。いきなり林氏にも出迎えていただき、私の古い作品を聴いたことがあると仰るが、私は氏のことがよくわかっていない。元来の私の人付き合いの悪さもあり、当然知っていて当たり前の人たちとの交流がろくにないのが私なので、そのときはそんなものかとも思っていました。呼ばれたのは、ライブ時に響きの強いノマルのアコースティックとPAに依存しないライブスタイルを、観客によりよく聴かせるにはどうしたらよいかという、アドバイザーとしてのものでした。この日は丁度開発途上のBAROm1マイクと録音機のセットを持参し、試験的に録音させていただいたのですが、そうこうしているうちにノマルにとって重要な以降のライブの録音とミックスを任され、あれよあれよという間に出版が計画され、Utsunomia MIXというシリーズの名称までつけていただきました。

直接の打ち合わせはsaraさんとのことが多かったですが、方針の重要な決定は林氏によるもので、サウンドの部分に関して林氏と常に意見が合致するわけではないのですが、どのようにしたいかということのビジョンは常に持っていて、それは結果として出版物のクォリティーに反映していることからも、明確なものが打ち出されていたと思います。それは具体的な指示というよりも、常に抽象性を含んでいて、体よく誘導されていたのかもしれません。彼から学ばなければならないものがたくさんあったのに、そのチャンスはもうなくなってしまったことが悔しい。

*写真キャプション
2024年1月13日、ギャラリーノマル黒宮菜菜個展会場でのLiveアフター。前列左より黒宮菜菜、宇都宮泰、ナカタニタツヤ、林聡。後列左より大友良英、美川俊治、磯端伸一、sara(.es)。音源はUtsunomia MIX-007「Soul Boat」として同年6月にリリース。


宇都宮 泰
音楽探求家。
70年代の後半から音楽活動。
当初はシンセサイザーや古典電子音楽系のコンクール向け作品や劇伴を作曲・演奏・制作。その後制作分野に転向しインディペンデントではAFTER DINNER、少年ナイフ、JON(犬)、紅花林、テニスコーツなどのアルバム制作を、近年では即興分野としてUtsunomia MIXシリーズを手がける。2024年から自身の演奏活動も再開。

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