#003 ラングストン・ヒューズ『ぼくは多くの河を知っている』
タイトル:『ぼくは多くの河を知っている』
サブタイトル:ラングストン・ヒューズ自伝1
著 者:ラングストン・ヒューズ
訳 者:木島始
出版社:河出書房新社
初 版:1972年11月30日
定 価:¥1,200
ミズーリ州ジョプリン生まれでハーレム・ルネッサンスの中心人物だったラングストン・ヒューズ(1902-67)の自伝。本国で「The Big Sea」として1940年に刊行された第1巻の和訳。16年後の1956年に刊行された第2巻は大部なため日本では2冊に分けて出版された(自伝2「きみは自由になりたくないか」自伝3「終りのない世界」)。
アフリカへ旅立つ21才から書き起こされたこの第1巻が刊行されたとき、ヒューズはまだ38才。しかし、高校時代から詩を書き始めた早熟な文学少年だったヒューズにとっては決して早過ぎた回顧録ではなかったのかも知れない。第1部「21才」では、家族、とくに父親と学生時代について触れられ、第2部「大海原」は、アフリカからフランス、イタリアへの旅が語られる。「ブラック・ルネッサンス」と題された第3部は、他にほとんど資料の残されていないハーレム・ルネッサンスについての記述がたいへん貴重である。
訳者の木島始は自身詩人でもあり、すでにヒューズの「詩・黒人・ジャズ」を晶文社から刊行(1965)しており、ヒューズを知悉した適任者。木島は「訳者あとがき」を<ともあれ、この自伝は、黒人詩人の生いたちと青春を、人生の苦渋にもみにもまれてなお夢を摩滅されることなく、むしろ逞しく、人間らしく生きていこうとするひとりの作家を、あるがままに手にとるように感じとらせてくれる。なかなか結びつきがたいユーモアと詩が、生きた人間のなかから、とめどもなく奔り出てくる思いがする稀有の本だ>と結んでいる。
(原田和男氏所蔵)