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CD/DVD DisksNo. 317

#2345『Taka Nawashiro / Lifescape』

text by Tomoyuki Kubo 久保智之

ユニバーサルミュージック UCCJ-2239 ¥3,300(税込)

Taka Nawashiro (gt, voice)
松村瑠璃 (vo) on 2
石川紅奈 (vo) on 7
馬場智章 (ts) on 3
ヴィクター・グールド (p, voice) on 1, 2, 3, 5, 6
ジョン・カワード (p) on 4, 7, 8
ベン・アリソン (b, voice) on 1, 2, 3, 5, 6
カノア・メンデンホール (b) on 7, 8
E.J.ストリックランド (ds, voice) on 1, 2, 3, 5, 6
石若駿 (ds) on 7, 8

1. WindBeast
2. Promise of 60
3. Actual Proof
4. Song For Orange
5. 6 to 11
6. SFK
7. Kobune
8. Lifescape


新進気鋭のギタリスト、Taka Nawashiroの2ndアルバム。

Taka Nawashiroは、ニュースクール大学を卒業後ニューヨークを拠点に活動していたが、現在は東京を拠点に移し、石川紅奈(vo)や石若駿(ds)などとの多くのプロジェクトに参加している。
本作は、ニューヨークと東京、2つの場所で共に活動をしてきたミュージシャンとの繋がりを集大成することをコンセプトにつくられているという。ニューヨークでベーシックトラックを録音し、東京で石若駿や馬場智章(ts)などを迎え、オーヴァーダブをし完成させたそうだ。アルバム・タイトルにもなっている「Lifescape (人生の景色)」は、「誰もがそれぞれの人生というストーリーを生きていることを、アルバムを通して感じてほしい」という願いが込められているとのことだ。

使用ギターは、スペイン製の「Soulezza Guitars」のヘッドレス・ギター。芯のある甘いトーンがとても心地好い。
収録曲は、M3<Actual Proof>とM2<Promise of 60>の歌詞を除いて、全てTaka Nawashiroのオリジナル作品となる。
Duo演奏を除くと大きく2つのバンド構成となっており、そのグルーヴ等の違いもこのアルバムの魅力の一つではないかと感じた。

M1, M2, M3, M5, M6
・E.J.ストリックランド(ds)
・ベン・アリソン(b)
・ヴィクター・グールド(p)
・(M2のみ) 松村瑠璃(vo)
・(M3のみ) 馬場智章(ts)

M4
・ジョン・カワード(p) (duo)

M7, M8
・石若駿(ds)
・カノア・メンデンホール(b)
・ジョン・カワード(p)
・(M7のみ) 石川紅奈(vo)

M1<WindBeast>は各配信サイトにて先行公開されている。軽快なリズムとハーモニーの中で、Taka Nawashiroとヴィクター・グールドの爽やかなソロが展開されていく。Taka Nawashiroのソロは、16分音符のフレーズを丁寧に敷き詰めていくようなとても鮮やかなプレイだ。

M2の<Promise of 60>は、松村瑠璃の溌剌としたボーカルが冴え渡る一曲。歌詞は松村瑠璃によるものだ。エネルギッシュに展開していくリズム隊の上でギター、ボーカルがユニゾンで鮮やかに歌い上げる。M3の<Actual Proof>は、Herbie Hancockのファンク曲として有名な曲だが、ここではなんとバラードとして演奏されている。馬場智章の柔らかなテナーサックスとギターが、寄り添うようにゆったりとテーマのメロディを展開していく。リズム主体で演奏されることが多い曲だが、こうしてゆっくりと味わうと、メロディやハーモニーがとても美しい曲であることに気づかされる。Taka Nawashiroのアレンジ・センスが光る曲だ。M4<Song For Orange>はTaka Nawashiroとジョン・カワード(p)のデュオ演奏による三拍子のバラード曲。ギターとピアノが手を取り合いながら優雅にダンスをしているような美しい曲だ。M5<6 to 11>はブラジリアン風のリズムとメロディ。といっても、リズムが際立つわけではなく、とても柔らかで優しい曲だ。M6<SFK>は冒頭からドライブ感のあるリフが続くが、ギターはそのリズムをゆったりととらえて、伸びやかに朗々と歌い上げる。M7<Kobune>はM2と同様のボーカル曲となるが、こちらでは石川紅奈の透き通った声が沁みわたる。疾走感のあるM6<SFK>とのつながりによるリズムのコントラスト感の演出もとても心憎く感じた。このM6, M7の配置によって、石若駿(ds)とカノア・メンデンホール(b)のリズム隊の「しなやかさ」のようなものが、いっそう強く感じられるようになっているのではないだろうか。M8<Lifescape>は、M7からのしなやかさを引き継いだような展開で、なおかつアルバム全体を総括するようなドラマチックな内容となっている。

本アルバムでは、Taka Nawashiroをはじめとする各ミュージシャンのとても活き活きとした演奏を聴くことができるが、何より、それぞれの曲がとても美しく魅力的だ。全ての曲が、とても優しさに満ちたメロディとハーモニーに溢れている。そしてそれぞれの曲において、その特徴を最大限に引き出すアーティストが参加し、各曲の魅力を最大限に引き出しているように感じられた。聴くたびに新たな発見のある、とても味わい深い魅力的な作品だ。

久保智之

久保智之(Tomoyuki Kubo) 東京生まれ 早大卒 patweek (Pat Metheny Fanpage) 主宰  記事執筆実績等:ジャズライフ, ジャズ・ギター・マガジン, ヤング・ギター, ADLIB, ブルーノート・ジャパン(イベント), 慶應義塾大学アート・センター , ライナーノーツ(Pat Metheny)等

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