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CD/DVD DisksNo. 331

#2408『Tramonto / John Taylor, Marc Johnson, Joey Baron』
『トラモント/ジョン・テイラー、マーク・ジョンソン、ジョーイ・バロン』

Text by Hideo Kanno 神野秀雄

ECM2544 (Sep 19, 2025)

John Taylor: Piano
Marc Johnson: Double Bass
Joey Baron: Drums

Pure and Simple (John Taylor)
Between Moon (John Taylor)
Up Too Late (Steve Swallow)
Tramonto (Ralph Towner)
Ambleside (John Taylor)

Recorded January 2002, CBSO Centre, Birmingham


ケニー・ホイーラーやノーマ・ウィンストンと共同作業の多かったイギリスのピアニスト、ジョン・テイラーが、2015年、フランスでのライヴ中に倒れて亡くなってから早いもので10年が経過した。ジョンの最初のECM録音は、1977年3月、ケニー、ノーマとのユニットによる『Azimuth』(ECM1099)であり、このユニットはジョンのディレクションが強かったと思われ、以降、ジョンは数えきれないECM作品に参加して、”ECMサウンド”を体現して来た。意外にもジョン・テイラー名義のリーダーアルバムは、2003年リリースの『Rosslyn』(ECM1751)まで待つことになる。『Azimuth』については、筆者の「ECM: 私の1枚〜Azimuth」をご参照いただきたい。

ジョンの遅すぎる初ECMリーダーアルバム『Rosslyn』(ECM1751)のメンバーが、ジョン・テイラー、マーク・ジョンソン、ジョーイ・バロン。2002年4月にオスロ・レインボー・スタジオで録音された。あらためて『Rosslyn』を聴くとその楽曲とインタープレイの美しさとアルバムとしての完成度の高さに驚かされる。ぜひご一聴をお勧めしたい。

そして、オスロ録音から遡っての、2002年1月のツアーからイギリス、バーミンガム CBSOセンターで録音された『Tramonto』(ECM2544)。研ぎ澄まされ、さまざまな点でコントロールされて創られたスタジオ盤と遜色のない美しさと完成度を魅せる。他方、この美しい音楽が観客とのインターアクションで生まれている記録であるということ、1曲15分に及ぶ演奏も収められているということで、その存在の重要性は大きい。そして両盤ともに、ただ美しいだけではなく、胸が締め付けられるような、気持ちの良い「せつなさ」はなんだろう。ジョン・テイラーという唯一無二なピアニストを失った悲しさをあらためて感じた。

<Tramonto>は、ラルフ・タウナー作で『Ralph Towner & Gary Peacock / Oracle』(ECM1490, 1993年)に収録されカヴァーも多い名曲。<Up Too Late>は、スティーヴ・スワロー作で『Playing In Traffic / Steve Swallow, Ohad Talmor, Adam Nussbaum』などに収録されている。

欲を言えば、2002年から2015年までのジョン・テイラーの音源を発掘して、ECMからのリリースがあればよいと思うのだけれど。

結論としては、多くの方にスタジオ盤『Rosslyn』のライヴ盤『Tramonto』の両方をぜひ聴いていただいて、この美しい世界に没入して欲しいと思う。

【関連リンク】
特集「追悼 ジョン・テイラー」

特集『ECM: 私の1枚』
神野秀雄『Azimuth / John Taylor, Norma Winstone & Kenny Wheeler』

神野秀雄

神野秀雄 Hideo Kanno 福島県出身。東京大学理学系研究科生物化学専攻修士課程修了。保原中学校吹奏楽部でサックスを始め、福島高校ジャズ研から東京大学ジャズ研へ。『キース・ジャレット/マイ・ソング』を中学で聴いて以来のECMファン。Facebookグループ「ECM Fan Group in Japan - Jazz, Classic & Beyond」を主催。ECMファンの情報交換に活用していただければ幸いだ。

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