#1391『Shai Maestro Trio / The Stone Skipper』
text by Masanori Tada 多田雅範
現代ピアノ・ジャズ・シーンの諸相をあぶり出す6アルバム連続試聴記
Sound Surveyor Music SSM1116
Shai Maestro (piano)
Jorge Roeder (bass)
Ziv Ravitz: (drums)
Gretchen Parlato (Voice)
Theo Bleckmann (Voice)
Neli Andreeva (Voice)
Kalina Andreeva (Voice)
01 A Man, Morning, Street, Rain
02 Without Words
03 From One Soul to Another
04 Pearl
05 Stop Motion
06 Kunda kuchka
07 The Stone Skipper
08 Mirrors
09 The Message
10 Spirit (For Anat)
11 It’s Your Blessing and Your Curse
12 Water Colors
13 Rain, Morning, a Man, Street
14 The One You Seek Is You
15 Epilogue
これまた耳の心を揺さぶるピアノ・アルバムが登場していた!
ゾフィー兄さんを誘ってマン宅に集まろうとエースに声をかけていると、「セブン兄さん、地球ではこんなアルバムが出ているのですが」と、おれの耳を試すのか?
「イスラエル・ジャズ・ブームの立役者、グレッチェン・パーラトやテオ・ブレックマンもゲスト参加、美しき詩情と実験性の融合、10代でマーク・ジュリアナと共にベース奏者アヴィシャイ・コーエンのバンドに参加、巨匠キース・ジャレットも絶賛するその独創的なピアノプレイ、」
「ECMのテオ・ブレックマン新譜エレジーには、ベン・モンダー、ジョン・ホーレンベックとともに参画しているだと?」
引っ込み思案の巨匠、シャイ・マエストロ、大胆すぎるぜ、
ううう、擦過音テクノの美味しいサウンドから始まる、Jazz The New Chapter が明らかにした新世代ドラムの導入も自然だ、ECMフォークが俎上にあげたヴォイスも聴こえる、ブラッド・メルドーがオードとハイウェイ・ライダーで踏み出した地平もデフォルトにする、
美味しい聴きどころばかりだ、が、それらはすべて借りパク、その場限りのファションショーにしかなっていないというなんとも言えないドリームランド状態、シャイ・マエストロ、あなたは誰だ?、ペットサウンズやサージェントペパーズをクリエイトしたいというポップスの欲望をミュージシャンとして持つことは認められなければならない、でもなあ、ウィントン・マルサリスが幼少期に刷り込まれたジャズというのはカートゥーン・ミュージックでのそのフレイバだったことが生涯を規定するがごとくで、
2度3度聴き込むに、怒り新党な感慨ばかりが厚みを増してくる、「トラック7が好きー!編集CDRに入れようかな」「なに籠絡されてんですか!」と笑い話にしている場合ではない、こういう音楽、こういうジャズには、何か新しい世代ならではの症状が現れていると思われる、
ポピュラー音楽とジャズとの結合については、2012年のマヌ・カチェ『マヌ・カチェ』ECM盤を佐藤英輔が年間ベストに掲げる座談会で示唆されていたことを想起もする、そこで言わんとする感覚的な発見を2年も経ってしているこのおれは55さい、充分に周回遅れな耳であることは自覚している、
借りパクも、剽窃も、孫引きも、ポップスの凶悪で生命線な力学である、これをジャズとして聴けるのかというと申し訳ないがまったくノーだ、これをジャズだと力説する若者たちとの断層は明確に深い、そこまで言われて「よっしゃ聴いてみてやろう」と読者が思われることが本望である、(多田雅範)
益子博之×多田雅範=四谷音盤茶会 vol. 25
2017年4月23日 19:00 – 22:00
喫茶茶会記
〒160-0015 東京都 新宿区大京町2-4 サウンドビル1F
ホスト:益子博之・多田雅範
ゲスト:大村 亘(ドラム・タブラ奏者/作曲家)
参加費:¥1,300 (1ドリンク付き)
今回は、2017年第1 四半期(1~3月)に入手したニューヨーク ダウンタウン~ブルックリンのジャズを中心とした新譜CDをご紹介します。
ゲストには、ドラム・タブラ奏者/作曲家の大村 亘さんをお迎えします。ジャズの世界で幅広く活躍し、インド古典音楽にも深い造詣をお持ちの大村さんは、現在のニューヨークを中心としたシーンの動向をどのように聴くのでしょうか。お楽しみに。(益子博之)