#1252 『Mette Rasmussen and Chris Corsano / All the Ghosts at Once』
Relative Pitch Records RPR1037
Mette Rasmussen (as)
Chris Corsano (ds)
1. Train Track
2. _____’s Lament (Part 1)
3. _____’s Lament (Part 2)
4. Contester
5. How Many of These Things Do We Need Anyway?
6. Exploding Foods
7. Dots…………(for Paul Flaherty)
8. O Space Heater! My Space Heater!
9. Yesterday’s Teenyboppers Are Today’s Republicans
Recorded – Max Johnson at Ibeam, Brooklyn, NY, October 2013
Mixed – Jim Clouse at Park West Studios, Brooklyn, NY, June 2014
Executive Producers – Kevin Reilly and Mike Panico
Front Cover and Mette Rasmussen Photo – Peter Gannushkin
Chris Corsano Photo – Frank Schmitt
Cover Art & Layout – Chris Corsano
メテ・ラスムセンは、デンマーク生まれ・ノルウェー在住の女性サックス奏者である。日本での知名度はまだ低いが、欧米をかなり精力的に動き回っており、あまり自宅には帰っていないそうだ。最近では、アクセル・ドゥナー、ルディ・マハール、アラン・シルヴァといった即興音楽家たちと共演している。
NYでは、2013年より、ドラマーのクリス・コルサーノと共演しており、本盤はその時の記録である。コルサーノは、最近では「坂田明&ちかもらち」での演奏でも注目を集めている。
もっとも、コルサーノについても、評論家のシスコ・ブラッドリーによれば「ニューヨークで10年以上も活動しているにも拘らず、十分な注目を集めてこなかった」存在であり、このデュオが一見地味なものとして位置づけられてしまいそうだ。
しかし、聴いてみるとわかることだが、ふたりの演奏は野心的かつ独創的であり、とても面白い。
コルサーノは、バスドラムもフロアタムも多用し、地響きを立てるような爆発的なアプローチで攻める。それとともに、シンバルを擦っているのだろうか、ときに鼓膜を刺激する金属音を発する。
前者の嵐のようなパルスに対しては、ラスムセンはがっぷり四つに対峙して、オーソドックスに、しかし激烈に、アルトを吹きまくる。なお、訊ねてみると、アルトは1928年ヴィンテージのコーン、マウスピースは古いセルマー、リードはリコーの3番(オーソドックスな硬さ)だそうである。
一方、後者の金属ノイズ攻撃に対しては、アルトで、金属的、あるいはエレクトロニクス的な音を発する。また、時には静寂の中で、尺八を思わせるような変わった音も出している。このあたりの柔軟さと幅広さが、ラスムセンのアルトの魅力であろうか。
本人は、最近、マリオン・ブラウンを好んで聴くという。確かに、激烈さと柔軟さに加えて、朗々と吹くときのラスムセンの音色には、抒情性も見え隠れする。
サックスとドラムスの即興勝負としては、たとえば、フレッド・アンダーソンとスティーヴ・マッコールの『Vintage Duets』、ジョン・コルトレーンとラシッド・アリの『Interstellar Space』、フランク・ロウとラシッド・アリの『Duo Exchange』などを思い出す。本盤もそれらの名盤と同様に聴き応えがある。