#2220 『新澤健一郎ピアノトリオ / Ever 』
Text by Tomoyuki Kubo 久保智之
Iceblue Records IBRC0004 ¥2,000(税込)
Kenichiro Shinzawa 新澤健一郎 (piano)
Satsuki Kusui 楠井五月 (bass)
Satoshi Ishikawa 石川智 (percussion)
1. Ever (新澤健一郎)
2. Waltz for Debby (Bill Evans)
3. The First Quarter Moon Meets Jupiter (新澤健一郎)
4. Fluctuation (新澤健一郎)
Recorded live at Rakuya Nakameguro, Tokyo on July 11,2022.
Produced by Kenichiro Shinzawa 新澤健一郎
Mixing and Mastering Engineer: Kentaroh Kikuchi 菊地健太郎
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自身のユニット「イチョウ五重奏団」や、渡辺香津美、本多俊之、櫻井哲夫等との共演でも活躍中のピアニスト、新澤健一郎のニューアルバム。前作のソロ・ピアノによる『月の光 Clair De Lune』に続く本作品は、2022年7月に「中目黒 楽屋」で行われたピアノ・トリオ演奏を収めたミニ・ライブアルバムだ。
1曲目の〈Ever〉は2019年にリリースされたソロ・ピアノ・アルバムの『Saturday』に収められている人気曲。オープンなハーモニーの中での優しいメロディがとても美しい。オリジナルと同様にソロ・ピアノによる演奏から始まり、そこにベース・ソロが彩りを添える。徐々にビートが加わっていく中でのピアノ・ソロには、ソロアルバムの演奏で感じた優しさに加えて、大きな包容力も感じる。
2曲目〈Waltz for Debby〉は、ピアノ、パーカッション、ベースそれぞれの様々なアイディアが組み合わさり、サウンドがくるくると美しく変化する。三者の楽しげな会話の後半は、伸びやかな遊び心のある展開となっていく。いつの間にかブルースになり、その後、元のスタイルに戻ったと思いきや、最終的にはあらためてブルージーな余韻を残しながらのエンディング。楽しい!
3曲目〈The First Quarter Moon Meets Jupiter 〉は、アラブの「Samai(サマーイ)」 という10拍子のリズムでできた曲。軽やかに語りかけるようなピアノとハーモニクス中心のパーカッシブなベース、そしてその二人に寄り添うパーカッション。この三者の対話は、リズムとメロディの生み出す不思議なループ感と相まって、いつまでも聴いていたくなるようなサウンドを生み出している。
4曲目〈Fluctuation〉は、パーカッション類が広がりのある空間をつくり、ピアノの低音のリフが色合いをつくる。その上でベースが歌い、ピアノが歌う。深い海の中で光がゆっくりと漂っているような世界が広がり、ゆらゆらと静かに光が漂うようなサウンドに包まれていく。聴き終えたときの深い余韻がたまらなく心地良い。
M-1, 3, 4の新澤健一郎の曲には、ECM的な、広大な空間を感じさせる要素が多く詰まっている。楠井のベースと石川のパーカッションは、とても奥行きのあるサウンドを有しており、このトリオのどこまでも広がっていくような透き通った空気感は、この3人でなければつくり出せないものといえるだろう。
本作品は、この3人が会場で伸び伸びと自由奔放に演奏した瞬間を記録した、まさに「ライブ」アルバムである。一方で編集面では、そのライブ音源を用いながらも、リスナーがライブ会場では味わえない「静かな余韻」も楽しめるようにもなっている。これは何度も聴きかえしたくなるアルバムだ。
新澤健一郎ピアノトリオ「Ever」CD発売記念ライブ
新澤健一郎(p), 楠井五月(b), 石川智(perc)
2022年12月27日 (火) 中目黒楽屋 19:30開演 配信あり
https://www.rakuya.asia/
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