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及川公生の聴きどころチェックNo. 272

#637 『Great 3:菊地雅章|ゲイリー・ピーコック|富樫雅彦/完全版 セッションズ 1994』
『Great 3: Masabumi Kikuchi|Gary Peacock|Masahiko Togashi / Complete Sessions 1994』

text by Kimio Oikawa 及川公生

Nadja 21/King International

菊地雅章 (p)
ゲイリー・ピーコック (b)
富樫雅彦 (perc)

Disc 1:
1.Summertime
2.Skylark
3.Waltz Step (M.Togashi)
4.My Favorite Things
5.Kansago-No (G.Peacock/b-solo)
6.Begin the Beguine
7.Coral Spring (G.Peacock)
8.Laura
9.Bley’s Triad (M/Kikuchi)
10.Home on the Range (p&b-p&b)
11.Song in D (G.Peacock/b-solo)
12.Misty (p-solo)
13.Round About Midnight (p-solo)

Disc 2:
1.Moor (Gary Peacock)
2.Carla (Paul Bley)
3. Little Abi (Masabumi Kikuchi)
Disc 3:
4.Nature Boy (Eden Ahbez)
5.Tennessee Waltz (Pee Wee King)
6.Rambling (Paul Bely)
Disc 4:
MC:Poo Kikuchi
7.Straight, No Chaser (Thelonious Monk)
8.Peace (Ornette Coleman)
9.Good-bye (Gordon Jenkins)

Executive producer: 船木文宏
Production director: 亀山信夫
Musical director: 稲岡邦彌 (Nadja 21)
A&R: 平野聡 (King International)
Recording engineer: 及川公生
Recorded at 音響ハウス 東京 1994年4月1&2日
Recorded live at Pit Inn 東京 1994年3月29日
Mastering engineer: 辻 裕行
Mastered at KING 関口台スタジオ 東京 2020年11月19&26日


Disc 1:
Great 3  完全版『ビギン・ザ・ビギン』セッションズ 1994

筆者録音。サウンド構築を語って、このディスクの聴きどころを述べる。ピアノ、ドラム、かなりオンマイクの表現で音像は作られる。2曲のベースのソロ、センターにドスの効いた効果で表現される。エンジニアとして、仕掛けたサウンドである。スタジオの天井の高さを利用したブースを設けて開放感を作った。低音の開放感が、今までにない効果をもたらした。使用したマイクはノイマンM-49。さらにピアノはDPA。菊地雅章のリクエスト。マイキングで演奏者のOKを得るまで、配置による音色を狙った。富樫雅彦パーカッションは筆者の経験から。ダイナミックを狙った。スタジオの開放感もあってか、音の抜けがよく混濁は全くない。録音機はPIONEER D-05。96kHzハイサンプリングDAT。

Disc 2~4:
Great 3 :完全版『テネシー・ワルツ』セッションズ 1994

キレのいいピアノのサウンドと、ベースが音像を固める。パーカッションはやや音像を引いている。ここは私の判断で、かぶりを避けた。
<Straight, No Chaser> から同等のバランスに、ピアノの音像が派手に出る。仕掛けたピアノのマイキングがうまく効果を出している。思い切ってベース、パーカッションのバランスを引き出して、ライブの味わいを整えた。マイキングは、ベース、NEUMANN M -149。ピアノ、AKG 414 EB。パーカッション、AKG C-451 x 4。

Great  3  :Peacock サウンンドの挑戦

録音時、時間の空いた時に、Gary Peacockさんが、「ベースだけど音に囲まれたような空間で、出来ないか?」と。では、「ブースで録音しますか?」と伺ったら、「いや、自分がベース・サウンドに包まれた、しかも高さ方向に充満したような」。私、どうしたら、と悩みました。当時、音響ハウスのスタジオは天井が高く、これを利用しようと考えた。当然マイクも変更。ワンポイント・ステレオ収録用のノイマンSM-69を、ベースを見下ろす位置にセット。ベースをステレオ空間から捉えたことになる。変化がズバリ聴ける<My Favorite Things>。惜しいかな休憩中の話なので全曲、このベースのサウンドではない。

及川公生

及川公生 Kimio Oikawa 1936年福岡県生まれ。FM東海(現 東京FM)技術部を経て独立。大阪万国博・鉄鋼館の音響技術や世界歌謡祭、ねむ・ジャズ・イン等のSRを担当。1976年以降ジャズ録音に専念し現在に至る。2003年度日本音響家協会賞受賞。東京芸術大学、洗足学園音楽大学非常勤講師を経て、現在、音響芸術専門学校非常勤講師。AES会員。

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