#1310 jazzahead! 2024 at Bremen ジャズアヘッド!2024 at ドイツ・ブレーメン
(jazzahead! 2024予告PV)
Text by Makiyo Sakai 酒井麻生代
今年4月11〜13日、私はグリム童話「ブレーメンの音楽隊」で知られているドイツ北部のブレーメンの地を訪れた。
街中いたるところに、ロバ、イヌ、ネコ、オンドリの音楽隊のオブジェなどを発見することができ、ミュージシャンとしては、自然にテンションが上がる光景なのだが、この物語をご存知の方は不思議に思うだろう。なぜなら、この動物たちはブレーメンに向かってはいたものの最終的にはここに到着していないからだ。。
そんな話はさておき、ここに来た目的は、年に一度行われる世界的なジャズフェスティバルであり見本市でもある『jazzahead!』に参加するためだ。ドイツを中心に、ヨーロッパ、そして世界各国およそ60カ国から約3,000人のジャズのアーティストや音楽関係者が集った本イベントは、2016年にスタートし、今年で18回目を迎えた。
音楽の内容としては、いわゆるオーソドックスなジャズスタンダードを演奏するというステージはほとんどなく、コンテンポラリー、フリージャズ、民族音楽との融合であったり、登場する楽器やアンサンブル編成も大変珍しいものが多く、耳に入ってくるサウンドはどれも革新的で創造的だ。
それはジャズの進化というより、ジャズの多様性を感じさせるもので、各国のミュージシャンの奏でる音楽は、その国の情景や情勢までをも想像させ、それぞれの想いを音に注いでいく情熱に惹き込まながら、まさに世界を旅している気持ちになる3日間であった。
L: REBECCA TRESCHER TENTET (DE) R: LEÏLA MARTIAL & VALENTIN CECCALDI „FIL” (FR)
そして、jazzahead!の楽しみは、このステージショウだけにとどまらない。
他のジャズフェスとは一線を画しているもの、それは、各国からの音楽関係者、メディア、レーベル、プロモーター、アーティスト、ジャーナリストなどが一堂に会し、展示会や商談が行われる場所が設けられており、ここで各国のジャズシーンが次々に繋がり、また新たな展開が世界的に広がっていくというところだ。
私は「Professional」として参加登録していたので、このTrade Fair会場にもアクセスができた。一般のFestival入場券ではTrade Fairへのアクセスはできない。
さて、私はまずECM Recordsコーナーへひとっ飛び。個人的にここは外せない(笑)。
会場には、jazzahead!出演者の方のお姿も!
スイス生まれのボーカル&ピアノのYumi Ito(伊藤悠美)さんとお写真を撮っていただいた。主にヨーロッパで活動されていて、2024年8月に来日ツアーをされるとのことで、今から再会が楽しみだ。
そして、Red Hook Records オーナー、ECM Records元プロデューサーのSun Chungさん(右)ともお写真を。ジャケットデザインの美しさも印象的なレーベルだ。
各国のブースでは、その土地のお酒やおつまみなどが振る舞われ、それが良いコミュニケーションツールとなっているようだった。夕方になると、フランスのブースでは美味しいワインやチーズが出て、たちまち人が集まる。もちろん私は連日ここへ張り切って参上(笑)。旅の恥はかき捨てとばかりに、片言の英語でさまざまな方とお話しすることもでき、有意義な時間となった。
カフェのコーナーでは、日本のジャズフェス関係者がプロモーターと直接交渉をしている場面に遭遇することができた。あぁ、こうして海外アーティストは日本に招聘されてるのかと、ワクワクと感動を覚えた。
個人的には、ちょうどPhillip Strange氏とのデュオアルバム『Bring the Light』のリリース直前だったこともあり、いくつかのブースに立ち寄り、音源とプロフィールを載せたフライヤーを担当者の方にお渡ししたのだが、その後、アメリカの某有名誌から連絡を頂き、レビューを載せてくださることが決まったり、CDの流通を某レーベルが担ってくださることになったりと、思いがけず有難いご縁が繋がり、このフェスで新たなビジネスチャンスまで頂けたことには驚いた。
『Makiyo Sakai & Phillip Strange / Bring the Light』 (試聴YouTubeはこちら、ライヴYouTubeはこちら)
いわゆる名の通った有名なミュージシャンを生で見ることができるジャズフェスは、もちろん価値があるかもしれないが、世界各国の若いミュージシャンが、それぞれの価値観を持ち自由に発信している音楽は、エネルギーと希望に満ち溢れている。それこそがジャズであり、また国際的なジャズ業界の発展をも担うjazzahead!に、これからも大いに期待を膨らませたい。
【番外編: リープフラウエン教会】
ブレーメンの街で一番気に入った場所は、市庁舎の近く、冒頭の音楽隊像横にある「リープフラウエン教会」だ。中には大きなブランコがあり、そこにはこんな注意書きが。
Here you swing with God’s blessing at your own risk.
ジャズミュージシャンとして、ここは命懸けでswingさせていただいた(笑)。
ぜひブレーメンの地で、身も心もswingを!
酒井麻生代 Makiyo Sakai: フルート奏者・作曲家
大津市出身。11歳よりフルートを始め、学生時代はクラシックを学び、様々なコンクールで受賞。大阪教育大学 教養学科 フルート科卒業。 ボストンに短期留学以降、ジャズに転向。帰国後、拠点を東京に移し、岡淳氏、グスターボ・アナクレート氏に師事。
2016年、ポニーキャニオンよりメジャーデビュー。リーダーアルバム「Silver Painting」と「展覧会の絵」をリリース。
ブラジル音楽にも精通し、自身を中心とするユニットBanda Felizのアルバム『Boa Viagem』をリリース。 その後、渡辺貞夫グループなどで活躍中のギタリスト、マルセロ木村とのデュオアルバム『Vida』をリリース。
最新アルバムは、世界的ジャズピアニスト、フィリップ・ストレンジとの全曲オリジナルのデュオアルバム『Bring the Light』。
都内を中心に、年間約240本のジャズライブの他、歌謡曲や演歌においても活動し、渡辺真知子、布施明などのサポートでのテレビ出演、八代亜紀のレコーディング等、幅広いジャンルのアーティストとの演奏を行なう。作曲家としての評価も高く、楽曲提供なども行なう。
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