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Concerts/Live ShowsNo. 317

#1322「Skywalker」sara(.es)+沼尾翔子
古巻和芳個展関連Live@Gallery Nomart

text by Akira Ohshima 大島彰
photo by Munemyouou Hozan 保山宗明玉/Ring Okazaki 岡崎 凛

古巻和芳個展関連Live『Skywalker』8月24日(土)、大阪「Gallery Nomart」~深江橋から宇宙へ

沼尾翔子 vocal, guitar
sara (.es) piano, etc.


………ふわふわと、空を舞う。
この日の主役は会場の展示空間に張られた糸の上をやじろべえのようにバランスを取って歩く人物の木彫「Skywalker」No.21。綱渡りをしているのは身長52センチの少女。ゆらゆらと揺れながら、《わたしはここにいるよ》と、どこか童謡的な佇まいのワンピを着た少女が歌っていました。
少女を挟んで、木彫のドレスと同じラインのニットを着た沼尾さん、アイボリーのドレスを着たsaraさんが登場。

沼尾さんにとっては初めての会場、初めての共演で、《何も決めずに会場へ向かいます。空間、作品と向き合う時間にしたい》と。開場2時間前に展示空間に初めて足を踏み入れました。そのときの第一印象で、ソロで演る曲を選ばれたようです。

演奏は沼尾さんのソロから始まりました。ギターを抱えて、微かな音が展示空間に響いていきます。沼尾さん曰く《楽器になりたいヴォーカリスト》だとか、やがて言葉が聴こえてきます、《ここにいるよ》と木彫の少女と話しています。CDアルバム収録の「つづみ」ですが、Special long 即興 version というべきか、言葉を声を楽器のように自在に操り、微かな声で、幽かな音で、聴く人を心地よく虜にしていきます。
《私には、歌う存在、あるいは私が彫刻を通して表現している個の存在、そういうささやかな存在を寿ぐ歌のように思えました。………ギャラリー空間に降る言霊は良いものでした。》と感想を寄せられたのは展示作品の美術家、古巻和芳さん。
《歌声とギターの爪弾きは、まるで空間を糸で紡いでいるようで、ひこうき雲が空に描かれていくようだった。》とは、モダンチョキチョキズ保山宗明玉さんの声。

やがてsaraさんの鈴の音が寄り添うように聴こえてきて、二人のデュオへと展開していきます。saraさんはハーモニカ、鍵盤ハーモニカなど、この日は柔らかい優しい響きの楽器を駆使して、沼尾さんとの世界を構築されてました。ピアノのアプローチもアグレッシブになることなく、パーカッション・ピアノという感じで、弦を弾かれているときの振動も、綱渡りしている少女の揺れるリズムに呼応するように、空気の分子を揺り動かし、鼓膜に届いてきました。それを返す沼尾さん、足を軽く踏み鳴らしてリズムに反応してました。

「ギャラリーノマル」でのライヴというのは常にアート作品に囲まれた展示空間での演奏です。ということは展示作品に呼応した即興展開が求められる訳で、作品そのものが演奏の方向性に強く関わっているのだなと、今回は改めて思いました。
………ふわふわと、空を舞う。
木彫の少女、沼尾翔子さん、saraさん、ありがとうございました。三人の歌声が宇宙へ届いたかなと。「宇宙支局の橋本孝之さん、聴こえましたよね。」

P.S.……ギターの弦の糸巻きがありますけど、そこで爪弾かれた音が印象に残っています。

古巻和芳個展「Skywalker, Toward Morning Glory」は9/7(土)までの開催です。是非ぜひ、この展示空間、綱渡りの少女に出逢って下さい。

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大島彰

大島彰 (ランダムスケッチ) 1955年京都市出身、川崎市在住。故・羽仁五郎に師事し、歴史・哲学を学ぶ。著作に「一里塚の起源」「もう一歩遠くまでといつも思っていた」他。編集者としては「邪馬台国関係文献目録」『阿部薫覚書』『岡村孝子全歌詩』他。音楽プロデューサーとしては、柳川芳命「地と図」(渋谷ジァンジァン)、「花の女子高生コンサート」(長野県上田市) 他。テレビ、ラジオ、CD制作などの仕事も多数。

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