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Concerts/Live ShowsReviewsNo. 318

#1324 solo*solo*duo concert at chef-d’œuvre
阿部真武(Masatake Abe, el-b)+ 津田貴司(Takashi Tsuda, el-g)

text & photo: Ring Okazaki 岡崎凛

solo*solo*duo concert at chef-d’œuvre
出演者:
Masatake Abe  (阿部真武,  electric bass)
Takashi Tsuda  (津田貴司, electric guitar)
会場:大阪市西区阿波座 シェ・ドゥーヴル(chef-d’œuvre)
日時:2024年8月28日(水)開演 19:00

Masatake Abe (left) Takashi Tsuda (right)
Masatake Abe (left)
Takashi Tsuda (right)

店の奥にあるギャラリーの白い壁を背にして、二人のインプロヴァイザーが座る。繊細かつ濃厚な音を丁寧に選ぶ二人だが、作風は大きく異なる。

2人の即興演奏を聴くのは初めてだった。彼らの共演は2度目だという。
8月下旬から関西各地で公演をしていた阿部真武については、以前別のユニットのライヴに行ったり、配信を聴いたりしていたが、津田貴司については全く知らず、予備知識ゼロで彼の奏でる音を聴いた。以前からこの店(シェ・ドゥーブル)に出演していたことを後で知る。さらに過去に遡っての彼の活動を詳しく知り、遅ればせながら生演奏を体験できたことを嬉しく思っている。


津田貴司のシンセサイザーから微粒子を散りばめたような電子音が部屋に溢れていく。遠い波に揺らめくようなギターの音に、ちらりと西アフリカのバンドを連想したが、やがてそれも遠い記憶のように薄れていく。細やかな音の厳かな群舞を眺めるようなひと時があった。
阿部真武は、エレキベースを膝に載せ、伸びやかさを排した硬質の単音を響かせていた。ソロではマーシャルのアンプをオン/オフするスイッチ音が印象的で、無音との対比も面白かった。

ファースト・ステージで2人それぞれのソロを聴き、セカンドでデュオを聴くというプログラムだった。2人の共演は2度目であるという。津田の使う機材に比べ、阿部の足元はペダルだけとシンプルだ。

ソロも充実していたが、デュオはさらにスリルに満ちたものになった。2人から生まれる音像の差異がどのような形でデュオで広がるだろうという疑問と期待の中でセカンド・ステージは始まった。
会場に満ちる電子音の滑らかな広がりの中で、不規則な硬質の音が弾ける。共演者に抗うでも寄り添うでもなく、モノローグのような語り口で、ベース音と言うよりは打鍵楽器のような響きで、水琴窟の音のような奇妙なリズムが生まれていた。津田の作る音が緩やかに面や層を織り成して広がるのに対して、阿部の音にはくっきり描かれた点と線を感じることが多かった。

それぞれの音楽家のソロを聴いて、その特性に触れてからデュオを聴くことで、聴く側の心には音像に接する土台ができており、とても集中しやすかった。即興ライヴにありがちな熱い「勝負」のムードがないのも特徴だったが、もちろん友好的雰囲気だけではなく、静かなせめぎ合いのひと時があの場にあった。ただし、互いの感性の深部を探り合うでもなく、スリルに満ちた音がごく自然に表れる関係が成立していたと思う。作風の違いはあれ、2人のインプロヴァイザーの共有する何かが、リスナーにも伝わってくる気がした。


楽器や音響機材の知識がない者が、即興へのアプローチを言葉で辿るのは、常にもどかしいものである。即興に限らず、音楽全般について言えることだろうが、瞬時に姿を変える音像について、何かしら言葉で語り、共有したいという願いは、叶えようもないのだが、今回も悪あがきの軌跡のようなものをここに書き記して、阿部真武と津田貴司の即興音楽への関心が少しでも高まることを期待している。


会場で販売されいた阿部真武、津田貴司それぞれのCDを購入した。津田のは新作ソロだった。ライヴで聴いた2人の演奏を再び味わうだけでなく、このときの体験の向こう側に広がるものに出会えた。

左:Memory Is a Poet, Spinning Stories
Tetuzi Akiyama / Masahide Tokunaga / Masataka Abe
(Recorded live at Ftarri, Tokyo, June 6, 2021)
https://www.ftarri.com/meenna/956/index.html
右: RECOMPOSTELLA (2024)
hofli/TAKASHI TSUDA
https://www.instagram.com/p/C8wh8B1SHLr/?igsh=MXk5YXN4ZTJzZnF0
(アルバムの購入先はいくつかあるようだが、津田貴司の新作については本人のインスタグラムの解説が充実していたので、そちらをリンク先にしている。
本誌関連記事:阿部真武へのインタビュー(インプロヴァイザーの立脚地 vol.9 阿部真武):
https://jazztokyo.org/interviews/improviser/post-89705/

岡崎凛

岡崎凛 Ring Okazaki 2000年頃から自分のブログなどに音楽記事を書く。その後スロヴァキアの音楽ファンとの交流をきっかけに中欧ジャズやフォークへの関心を強め、2014年にDU BOOKS「中央ヨーロッパ 現在進行形ミュージックシーン・ディスクガイド」でスロヴァキア、ハンガリー、チェコのアルバムを紹介。現在は関西の無料月刊ジャズ情報誌WAY OUT WESTで新譜を紹介中(月に2枚程度)。ピアノトリオ、フリージャズ、ブルースその他、あらゆる良盤に出会うのが楽しみです。

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