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Concerts/Live ShowsNo. 324

#1356 Joe Rosenberg Quartet JAPAN Tour 2025 大阪公演

2025年3月8日(土)
会場:Studio T-Bone(大阪市浪速区木津川1丁目2−6 児島ビル1F)
19時30分開演

Joe Rosenberg Quartet :
Rabito Arimoto 〔有本羅人〕 (tp, bcl & etc)
Ayumu Inoue〔井上歩〕 (bass)
Kei Morishita〔森下啓〕 (drums)
Joe Rosenberg〔ジョー・ローゼンバーグ〕(s.sax)

Flyer for Joe Rosenberg Quartet 2025 at Studio T-Bone
Flyer for Joe Rosenberg Quartet 2025 at Studio T-Bone

恒例となるジョー・ローゼンバーグのJapan Tour には、関西と関東で異なるメンバーが加わった。だがもちろん、ジョー・ローゼンバーグの目指す音楽に何ら変動はない。今回も曲展開の面白さが新鮮な2管コードレスカルテットを聴く。全員の自由で中身の濃いインプロヴィゼーションは、期待通りだった。リスナーを曲想の奥地へと運び入れて、それぞれの楽器の音を隅々まで聴かせる。4人の演奏の深い掘り下げと、はじけるユーモアを楽しむ。管楽器のメロディーを追い、薄暗くくねくねとした道を進むと、足音のようなドラムとベースが聞こえてくる。リスナーは各自の瞑想とともに、時には降り注ぐようなドラムソロを聴くなど、表情豊かなカルテットの繰り出す音を堪能する。少なくとも、自分はそんなふうに聴いていた。

ジョー・ローゼンバーグはほぼ毎年、春が近づくとStudio T-Boneにやってくる。2023年の公演で触れたジョーの公演内容と今回は、メンバーが変わって新鮮なものとなった。もちろん、それまで聴いてきた落合康介(b)、大村亘(ds)が参加せず、二人の演奏が聴けないのは寂しかったが、関西拠点の3人とジョー・ローゼンバーグのカルテットが中身の濃い演奏を聴かせてくれたので、今回も十分に公演を楽しんだ。
(昨年2024年は、ローゼンバーグ(ss)、有本羅人(tp&etc)、落合康介(b&馬頭琴)のセッションを聴き、ドラムの入った公演を聴いていない)


Joe Rosenberg Quartet
Joe Rosenberg Quartet

今回の大阪公演を含め、関西エリアでのツアーには、関西拠点の3人のメンバーが参加している。
井上歩(bass)は初めての共演、森下啓(drums)は2年目の共演だった。有本羅人(tp,bcl&etc)はこれまで何度もジョー・ローゼンバーグと共演している。

この関西ツアーを終えた後、ジョー・ローゼンバーグは関東に移動し、かみむら泰一(sax)、落合康介(b)、大村亘(ds)とのカルテットでツアーが行われた。最近まで「オーネット・コールマン jam セッション」を今回の会場であるStudio T-Boneで定期的に開催していた、かみむら泰一が参加したことで、オールネット・コールマン研究に熱心な2人のサックス奏者が並んだ関東ツアーも、きっと興味深いものだっただろう。

ジョー・ローゼンバーグが一切曲名を言わずに演奏したので、曲名はおろか、自作曲かどうかも分からなかった。オーネット・コールマンをよく聴く人なら、彼の曲が演奏されれば分かるかもしれないし、雰囲気の似たオリジナルだろうとか推測できるだろう。そして、今回のライヴについてもっと細かい分析ができるだろうが、楽曲についてそのあたりは分からなかった。
前回はそんなふうではなかったので、曲名を言わないのには何か理由があるのかもしれない。ツアー後に本人に訊こうかとも思ったが、今回の記事では、曲名は調べないことにした。(自分は曲名が分からなくても、十分に演奏を楽しんでいた。)

今回のライヴでは、楽曲構成を重視した演目が多かったような気がする。そしていつものように、ジョーがリーダーらしく指示を出していたと思う。そして2023年に聴いたとき以上に、しっかりとした構成を感じることが多かった。また4人がそれぞれのインプロヴィゼーションをじっくり掘り下げていく過程を、目の前で眺め、その音を追うのが楽しかった。25年ぐらい前に、オーネット・コールマン探求をデューイ・レッドマンとともに行っていたジョー・ローゼンバーグは、こうした音楽の継承者として、アジアを拠点に地道に行っているのだと感じる。
このカルテットの演奏者や、こうした音楽に詳しい人ならば、もっと踏み込んだ話ができると思うので、追ってコメントを頂ければと思う。


関西ツアーに参加した関西拠点のプレイヤー3人について、自分が知る範囲で簡単に紹介しておきたい。年齢は調べていないが、ジャズ演奏者としては若手となるだろう。
☆トランぺッターとバスクラリネットをメインに、ときにはパーカッションやヴォイスを交える有本羅人は、今回のライヴ会場だったStudioT-Boneを本拠地としており、ジョー・ローゼンバーグとの共演歴は長いようだ。複数のプロジェクト、グループでの活動を進めている彼は、あちこちのグループにサイド参加したり、ゲストプレイヤーとなったりと、多忙な毎日を送っているようだ。ジャズというジャンルに縛られず、多様な音楽に関心を示す開拓精神旺盛な音楽家である。

☆コントラバスの井上歩も、京阪神でのスケジュールがぎっしり詰まっているので、多忙な演奏家なのだろう。ときにはセッションホストを務めている。実は彼のライヴを、配信でなく目の前で聴いたのは今回のカルテットでの演奏が2回目だった。その前はコントラバスのソロ・ライヴを、つい最近聴きに行った。ベース一本というのは、おそらく関西ではレアな演目だろう。こういう個性的な活動に取り組む彼がジョー・ローゼンバーグのカルテットに加わると知って、それは是非聴きたいと思った。そして予想通りの中身の濃い演奏で、カルテットに新風をもたらしていた。

☆ドラムの森下啓は何度となく演奏を聴いている。関西でジャズライヴによく行く人なら、どこかで彼の演奏を聴いているのではないかと思う。ずいぶん前に、あるカルテットで初めて彼を聴いたとき、ドラムソロに風格があり、また聴きたいと思ったことがある。その後もソロパートを聴くチャンスは何度かあったが、今回のカルテットで聴いたソロはとりわけ素晴らしかった。

Joe Rosenberg Quartet 2025 for Kansai Tour
Joe Rosenberg Quartet 2025 for Kansai Tour

<参考 1>
2023年のジョー・ローゼンバーグ大阪公演については、下記記事に詳細を記している↓
https://jazztokyo.org/reviews/live-report/post-87581/
参考として、ここに書いたローゼンバーグの紹介の一部をピックアップしておく:
☆ジョー・ローゼンバーグ はバリ島、シンガポール、クアラルンプールなど東南アジアで精力的に活動。
☆神戸在住だった故・浜村昌子(piano)との共演者であり、アルバム『Quicksand』(2003,Black Saint)では2人の熱い演奏を聴くことができる。
☆ベーシスト、落合康介のブログには、ローゼンバーグとのツアー体験談が載っている。
☆「彼のライヴで味わうものは、過去20年以上の音楽家の活動から染み出すエッセンスだろう。それが未来に向けてゆっくりと広がっていくように感じる」

<参考 2>
デューイ・レッドマンをフィーチャーしたJoe Rosenberg’s Affinityは音楽配信やYou Tubeで聴くことができる。
https://youtu.be/l6rMZ0OFNkY?si=WT2h1At7CnPMXAnw


演奏終了後の4人の表情:

Joe Rosenberg Quartet at the end of the concert
Joe Rosenberg Quartet at the end of the concert

岡崎凛

岡崎凛 Ring Okazaki 2000年頃から自分のブログなどに音楽記事を書く。その後スロヴァキアの音楽ファンとの交流をきっかけに中欧ジャズやフォークへの関心を強め、2014年にDU BOOKS「中央ヨーロッパ 現在進行形ミュージックシーン・ディスクガイド」でスロヴァキア、ハンガリー、チェコのアルバムを紹介。現在は関西の無料月刊ジャズ情報誌WAY OUT WESTで新譜を紹介中(月に2枚程度)。ピアノトリオ、フリージャズ、ブルースその他、あらゆる良盤に出会うのが楽しみです。

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