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Concerts/Live ShowsNo. 325

#1363 オルケスタ・デラックス/デビュー・ライブ at BAROOM

2025年3月28日(金)南青山BAROOM 19:30〜
Text by Minako Ukita 浮田 美奈子
Photo by BAROOM

【メンバー】
江川ゲンタ (perc)
大儀見元 (perc)
伊達弦 (perc)
澤田浩史 (b)
塩谷哲 (p)
前田サラ(a.sax)
池村マリノ(t.sax)
河合わかば(tb)
西岡ひでろー(tp)
なかの綾(vo)

セットリスト(記載なしはカヴァー)
1st
01 Somos DELUXE (大儀見元)
02 Estoy Como Nunca
03 Nunca Contigo
04 El Reloj
05 Fever
06 Chaser (大儀見元)
2nd
07 Mas Blues
08 Mi Gente
09 Sway
10 Yo Soy El Son Salsa
11 リンゴの木の下で (Harry Williams/Egbert Van Alstyne)
アンコール
12 Sin Ti


3月28日(金)。仕事終わりで南青山のBAROOMに着いた時には1曲目がスタートしていた。会場に入るとすごい音圧のご機嫌なラテンサウンドが、バーンと体にぶつかってきた。前日3月27日(木)と2日間の『オルケスタ・デラックス』のデビューライブ2日目だ。

このバンド『オルケスタ・デラックス』は、最も日本で、いや世界でも知られているサルサ・バンド「オルケスタ・デ・ラ・ルス」出身で、忌野清志郎、山崎まさよし、birdなど数々のミュージシャンとの活動で知られるドラマー/パーカッショニストの江川ゲンタがバンマスだ。

「デビュー」というが、他にも百戦錬磨のメンバーが集っている。核となるのは元デ・ラ・ルスのメンバーだ。創設者である大儀見元(Perc)、創立時メンバーである江川ゲンタ(Tim)、澤田浩史(Bass)、少し遅れて加入した伊達弦(Conga)。大儀見と江川は中学高校の同級生だった。このすぐ後に塩谷哲(Pf)が加わった。

その後、デ・ラ・ルスを離れた各メンバーは個人で活動を始め、それぞれが日本の音楽シーンの重要なミュージシャンからのファーストコールを受けて様々なジャンルで活躍してきた。最も意外な所はベースの澤田かもしれない。彼はロックギタリストCharの長年のベーシストとしての知名度の方が圧倒的に高いだろう。しかし、だいぶ前から江川が還暦を過ぎたら新しいサルサバンドをやろうという話が、大儀見、澤田、塩谷、伊達などの中心メンバーで決まっていたそうだ。色々やっていても、彼らに共通する音楽のルーツは「サルサ」なのである。

今回、上記の核となるメンバー以外も、江川が中心になり強力なメンバーを揃えた。トロンボーンは米米クラブ、クレイジー・ケン・バンドなどで知られる河合わかば。トランペットには同じく交友も多く、パーカッショニストでもある西岡ひでろー、アルトサックスには、今一番カッコいい奏者である前田サラ、テナーサックスにはBLACK WAXで宮古島からデビューした池村マリノの4名の生きのいいホーンセクションが揃った。メインボーカルは昭和歌謡のカヴァーやソロで大活躍中の、なかの綾。この超強力な10名が『オルケスタ・デラックス』として集まり、「満を持して」のデビューライブとなったわけだ。

この豪華メンバーなので、2日ともライブはソールドアウト。会場は前半の最初こそ少し観客も遠慮がちだったが、江川の底抜けに明るいキャラクターと、強力なサルサのリズムで段々とBAROOMのフロアに降りて踊り始めた。そしてヴォーカル、なかの綾の登場で一気に華やかで和やかな雰囲気となった。彼女は自分のソロで昭和歌謡をラテン風に歌ってたりするので、サルサにレトロなアレンジを加えた演出が秀逸だった。最後の「リンゴの木の下で」などは彼女のヴォーカルを活かした、なかなか面白いアイデアだと思った。

そしてリズムセクションだ。私自身はドラムなど打楽器がとても好きなこともあり、サルサという、各楽器ごとの強力なリズムの組み合わせをベースにした音楽の複雑さにいつも驚嘆するのだが (自分が演奏することを考えると、恐ろしく勉強が必要だと気が遠くなるのだ)、このバンドの打楽器+ベースのリズムセクションは、そんな堅苦しい事はどうでもいいから何も考えずに踊ってしまえよ!といわんばかりの、人間を気持ちよく踊らせるパワーに溢れている。でも、実際は観客を自然に音楽で踊らせる、というのはなかなか容易な事ではないが、ここには1人だけでもライブで凄い存在感を放つ江川と大儀見が揃い踏みしているので、もうそれだけで尋常ではないのだ。しかもそこに伊達も加わり、ベースラインをずっと澤田がガッチリと支えているのだから、そりゃあもう強力すぎるパワーなのだ。

また、久々にサルサを演奏すると言っていた、塩谷”ソルト”哲のピアノがリズムとソロとで大活躍していた。うっとりするようなメランコリックなピアノソロからのスローなダンスナンバーへの導入などは、このバンドならではの「特別なもの」だろう。また、ホーンセクションも全員驚くほどよかったのだが、中でも1991年生まれの前田サラのサックスのインパクトが鮮烈だった。彼女はゴスペルをルーツに持った人のようで、「自分の声」として音が前に出ている感じで、聞いていて非常に気持ちがよかった。

実は大儀見と澤田は、大儀見がリーダーのサルサバンド『Salsa Swingoza(サルサ・スインゴサ)』でも長く活動しているのだが、こちらの『オルケスタ・デラックス』は上述の塩谷、なかの綾、前田らの存在によって、サルサ初心者でも気軽に入りやすく、楽しめるような、ポップさや分かりやさがある。『Salsa Swingoza』の方が、より硬派な路線のサルサといっていいだろう。実際、『オルケスタ・デラックス』ではあまりマニアックなサルサ路線にはしない、という方針のようだ。

これがデビューのお披露目で、全員が多忙なメンバーゆえ、今後の詳細な活動予定はまだ未定だそうだが、継続的に活動していく事は決まっているとの事だ。何も考えず、彼らの素敵な音のシャワーを浴びて踊れば、きっと頭の中のモヤモヤがリセットされるはずだ。是非今後の彼らの活動に注目していてほしい。

浮田 美奈子

クラシック音楽教師の家庭に育った一級建築士。自身も2歳半からピアノとフルートを学ぶ。同時に13歳で洋楽ロックやJAZZにも傾倒し、バンド活動を行う。JAZZとECMとの出会いはキース・ジャレットの「ケルン・コンサート」。 どんな音楽ジャンルも問わずに聴くが、基本的に実際に会場で聞かなければ真価は解らないと思っている。現在ドミニク・ミラー本人の承認の元、Dominic Miller_Fan Page JAPANを運営。https://dominicmillerjapanfan.com

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