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Concerts/Live Shows特集『クリス・ピッツィオコス』No. 235

#977 クリス・ピッツィオコス JAPAN TOUR 2017 秋葉原『スペシャル・セッション』

2017年9月30日(土) 東京都・秋葉原クラブ・グッドマン

Report and photos by Akira Saito 齊藤聡

Chris Pitsiokos (as)
Tatsuya Yoshida 吉田達也 (ds)
Junji Hirose 広瀬淳二 (ts)
JOJO Hiroshige JOJO広重 (g)
Dairo Suga スガダイロー (p)

ファーストセット:
1. Chris 広瀬
2. 吉田 スガ JOJO
3. Chris スガ 広瀬
4. Chris JOJO 吉田
5. Chris 吉田

セカンドセット:
6. Chris
7. Chris スガ
8. 日本人全員
9. Chris JOJO
10. Chris 吉田 広瀬
アンコール: 全員

クリス・ピッツィオコス初来日ツアーの最終日は、ノイズ、ロック、フリージャズなどを相互に越境する怪物たちとのギグとなった。ルインズの吉田達也に加え、フリージャズ・インプロの広瀬淳二にスガダイロー、非常階段のJOJO広重。リハーサルのとき既にただならぬ雰囲気を発散している。本番は当然ながら剛球の投げ合いになるに違いないのであり、予断を許さない。

メンバーの組み合わせは事前に決められていたが、それでも、演奏が終わるたびに、クリスは「Who’s Next?」と待ちきれないように言う。明らかにこの異色なメンバーとの手合わせを心の底から愉しんでおり、ただならぬアドレナリンが分泌されているように見える。

爆音を轟轟と放つ面々の中でスガダイローのピアノが消えないだろうかと懸念したのだが、それは杞憂に終わった。かれは高低を絶えず往還しての攻撃を行い、ときに怪獣軍団のサウンドを鮮やかに主導したりもして、驚くほどの存在感を示した。

広瀬淳二は音色の貫禄でいえばクリスを凌駕し、異常な音を発し続けた。その揺るがなさは動の継続を是とするクリスとは対照的だった。また、テナーの横に貼りつけた発砲スチロール(今年からの試み)を擦るなど、音色の多彩さもあった。クリスはその様子を横で凝視し、嬉しさを隠そうともしなかった。

JOJO広重についても、始まる前には音量が小さく、埋もれるのではないかと思いもしたのだが、心配など無駄なことであった。9曲目のクリスとのデュオではサウンドを持ち上げたままいつまでも着地させず、クリスはそれに対して高音のロングトーンで応じた。朦朧とさせられた。

怪物たちが、傾奇ながら抜きつ抜かれつの爆走をみせる。なるべく奇怪な貌を見せんとするメンバーに対して、クリスは多彩な技で呼応した。破裂音、唾をミストとしてスパーク。バップ的、ブルース的でもあるフレーズ。急加速と急停止。息遣いの増幅。マウスピースを外しての口笛。倍音のらせん、循環呼吸。痙攣。5曲目のデュオでは持ち込んだ楽譜をもとにクラスター的な「曲」もやった。強靭な超高速での千変万化こそがクリスなのだ。やはり、キメラなのであった。

演奏が終わり、テンションが高いまま、来年は自分のバンドで来たいと口にした。そのときかれのサウンドがどこまで進化し変貌しているか、震えて待ちたい。

(文中敬称略)

Chris Pitsiokos + Tatsuya Yoshida

Chris Pitsiokos Solo

CHRIS PITSIOKOS JAPAN TOUR 2017
Saturday, September 30th, 2017
Akihabara Club Goodman, Tokyo, Japan

Movie:纐纈淳也 Junya Koketsu
https://twitter.com/junya_koketsu

齊藤聡

齊藤 聡(さいとうあきら) 著書に『新しい排出権』、『齋藤徹の芸術 コントラバスが描く運動体』、共著に『温室効果ガス削減と排出量取引』、『これでいいのか福島原発事故報道』、『阿部薫2020 僕の前に誰もいなかった』、『AA 五十年後のアルバート・アイラー』(細田成嗣編著)、『開かれた音楽のアンソロジー〜フリージャズ&フリーミュージック 1981~2000』、『高木元輝~フリージャズサックスのパイオニア』など。『JazzTokyo』、『ele-king』、『Voyage』、『New York City Jazz Records』、『Jazz Right Now』、『Taiwan Beats』、『オフショア』、『Jaz.in』、『ミュージック・マガジン』などに寄稿。ブログ http://blog.goo.ne.jp/sightsong

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