#1201 沢田穣治『Contra Banda』リリース記念ライヴ with 望月慎一郎、馬場孝喜、石川智、城戸夕果
Text by Hideo Kanno 神野秀雄
沢田穣治 『Contra Banda』 from Unknown Silence リリース記念ライブ
2022年1月30日 19:30 公園通りクラシックス
沢田穣治 Joji Sawada (contrabass)
望月慎一郎 Shin-ichiro Mochizuki (piano)
馬場孝喜 Takayoshi Baba (guitar)
石川 智 Satoshi Ishikawa (drums)
special guest 城戸夕果 Yuka Kido (flute)
人生束の間の夢 Life is Fleeting Dream
奇妙な絵 Strange Landscape 奇妙な絵
Sorane 空音 (+城戸)
Contra Banda #1
Contra Banda #2
Yukiakari 雪明かり
Invisible Blue (+城戸)
Kaleidoscope (+城戸)
EC Old Country (+城戸)
ショーロ・クラブでの活動をはじめ、作曲家として、またさまざまなプロジェクトのプロデュースでも活躍してきた沢田穣治。最近では自己のレーベルunknown silenceを立ち上げ、物凄いペースでアルバムのリリースを続けている。『Contra Banda』はその中のものだが、沢田自身のリーダーアルバムとしては最重要の1枚で、ECMからの影響に強くフォーカスしつつ、今の沢田の音楽感を全力で表現している。このアルバムについては、ヒロ・ホンシュクによるアルバム・レビュー、及川公生による録音評もご参照いただきたいが、とにかく二人とも最大限の賛辞を惜しまない。筆者もこのアルバムの最初の一音から魂を持っていかれた。
『Contra Banda』には、沢田作品には欠かせない最も信頼するギタリストの馬場孝喜、『Trio 2019』の国内ライヴでも沢田が共演しているピアノの望月慎一郎、そしてドラムスには池長一美が参加していたが、ライヴではCOVID-19を巡る事情で、池長に代わって石川智がパーカッションで参加した。また、アルバムにも参加したフルートの城戸夕果がスペシャルゲストとして参加した。2021年には、ヒロ・ホンシュクの来日に合わせて、沢田穣治、城戸夕果を含むライブがあったことも付記しておこう。
沢田は2021年半ばに悪性リンパ腫が見つかり、闘病療養のため京都にずっと居たが、今回2022年1月の上京が復帰後初ライヴの機会となる。ライヴへの期待と同時に、誰もが沢田の健康面に不安を持っていた。沢田によると、病み上がり&抗がん剤副作用で指に力が入らない、指の感覚が弱くなっているところからの演奏で、感性だけで弾くと弾けなくて、弾くという行為をしっかりイメージして弾かないと弾けない、、、と語っていた。しかし、演奏家である以前に、作曲家、音楽家である沢田は、明確な音のイメージを持ちながら美しい繊細な音を生み出していた。またもともとジャズベーシストではないことが吉と出て、ジャズベースの常識に囚われず自在に、そして沢田にしか出せない音を引き出していたことは特筆したい。沢田の楽曲もいずれも素晴らしく、また曲の構造として、内容は高度でも、聴く者には分かりやすいメロディとシンプルさも持ち合わせていて、それは沢田が強く影響を受けた1970年代のECMの名曲の数々にも通じるものだ。
アンコールに演奏された<Old country>は沢田の幼少期の原風景をテーマに描かれた曲。父の自転車に乗せられていた夕焼けの畦道の情景を描いているという。それだけに感動的なサウンドとともにライヴの幕を閉じた。このメンバーでのライヴは今後、東京でも関西でも積極的に行なっていくつもりらしく、次回を楽しみにしている。
ヒロ・ホンシュク 帰国ツアー ヒロ・ホンシュク・城戸夕果・沢田穣治・馬場孝喜・渡辺亮