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特集『ECM: 私の1枚』

吉野俊介『Collin Walcott / Cloud Dance』
『コリン・ウォルコット/クラウド・ダンス

極楽浄土盤

個人的にエレクトリック・マイルス期が好きで、名盤『オン・ザ・コーナー』では黒いグルーヴに自在に乗っかる印象的なタブラでサイケ感を増長させた影の名手コリン・ウォルコット。そしてこのアルバムではジョン・アバークロンビーを除いて、ジャック・ディジョネット、デイヴ・ホランド、というエレマイルス時代の重要メンバーで構成されているのが本作を手に取ったきっかけだ。さらにアバークロンビーはECMを代表するギタリスト、まさにオールスターといってもいい布陣だ。

本作品は晴天を突くような、煌めくウォルコットのシタールと、アバークロンビーのエモーショナルなくぐもったトーンが対照的で、タイトルから察するにウォルコットが空や光を、アバークロンビーが移り行く雲の影を表現しているようだ。その下支えとしてホランドとディジョネットによるリズム部隊も自然に溶け合い、各楽器がリラックスして自然に会話しているようだ。ある意味、瞑想的で音楽ジャンルとかの枠組みを感じさせない映像的な自由な作品に仕上がっている。

アバークロンビーのギターソロもいつもよりリラックスし、気持ち良い音だけを選んでいるような浮遊感はジェリー・ガルシアにも通じる自由、トリップ感と高揚感をもたらす。

ジャズ、ECM、といった枠組みを超えて、全音楽ファン、ギターファンに勧めたい名盤だと思う。ジャケットがもう少し良ければECMの大名盤となっていたのかと思う。


ECM 1062

Collin Walcott (Sitar, Tabla)
John Abercrombie (Guitar)
Dave Holland (Bass)
Jack DeJohnette (Drums)

1 Margueritte (Collin Walcott) 08:25
2 Prancing (Collin Walcott) 03:23
3 Night Glider (Collin Walcott) 06:35
4 Scimitar (Collin Walcott, John Abercrombie) 02:42
5 Vadana (Dave Holland) 06:59
6 Eastern Song (Collin Walcott) 02:32
7 Padma (Collin Walcott, John Abercrombie) 02:43
8 Cloud Dance (Collin Walcott) 05:48

Recorded March 1975, Tonstudio Bauer, Ludwigsburg
Produced by Manfred Eicher


吉野俊介 よしの・しゅんすけ
1985年生まれ。中学生のころから音楽中毒で根っからのレコードマニア。何の因果かオーディオ雑誌の編集に関わることに。音楽之友社月刊ステレオ編集部に配属。2018年より編集長を務める。オーディオ機器のレビューのみならず、音楽を再生するということを、様々な視点から捉え、音楽とともにある生活をより豊かにすることを目標にしている。趣味はレコード収集。

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