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特集『ECM: 私の1枚』

眞壁えみ『Paul Motian / I have The Room Above Her』
『ポール・モチアン/アイ・ハヴ・ザ・ルーム・アバヴ・ハー』

このアルバムを初めて聞いたのはデンマークのオーフス(Aarhus)のライブハウスで、12年位前だったと思います。ギグが終わった後にこのアルバムが会場に流れ、音楽のあまりの美しさにびっくりしました。
アルバムを入手してからは聞かずにはいられないほどアディクトして聞きました。ビルの美しく幻想的なギターが脳にへばりつくほど聴いて、ジョーのサックスのフレーズを何度も歌って練習したのは懐かしい思い出です。
ビル・フリゼールのギター、ジョー・ロヴァーノのサックス、そしてリーダーのポール・モーシャンのドラム、この3人のみでつくりだしているとは思えないほどに、いろんな世界が織り成されている一枚です。
このアルバムはポールのキャラクタリスティックスをとてもよく表していると思います。創造的で挑戦的であり、そして感情豊かであること、暖かくて切なくて少し寂しくてそして思慮深い、このアルバムにはそういうものがいっぱい詰まっています。
3人のインプロヴィゼーションをカットしたテイクをトラックにもりこんだマンフレートのプロデュース力もさすがだと感心しました。
音楽家としてこのようなアルバムを一生のうちに一枚でもつくれたらどんなに幸せだろうか、などと思いを馳せたりもしました。

ある時、ビルにこのアルバムのについて尋ねたら、聴いたことがない、と言われ驚きました。その上ほぼ覚えていないのです。そういうものなのか、でもビルらしいなとも思いました。
ビルは決して止まらない、ので。彼が行う年間のツアーの量はとても多く、70歳を越えて彼ほど常に演奏をしているミュージシャンを他に知りません。
この一瞬に何が起こるか、それが大事であって、出した音には固執もしない。
時が止まれないようにまた次へ、前へ前へと進んでいく、そんなことを想像し、いいなぁ、と思いました。

このアルバムは音楽の美しさとともに、デンマークの風景やポールとの思い出、そしてビルの止まることのない前へ進む精神を思い起こさせてくれます。


ECM1902

Paul Motian (Drums)
Bill Frisell (Guitar)
Joe Lovano (Saxophones)

1 Osmosis Part III (Paul Motian) 05:55
2 Sketches (Paul Motian) 02:32
3 Odd Man out (Paul Motian) 04:13
4 Shadows (Paul Motian) 03:28
5 I Have The Room Above Her (Oscar Hammerstein, Jerome Kern) 05:31
6 Osmosis Part I (Paul Motian) 03:28
7 Dance (Paul Motian) 04:02
8 Harmony (Paul Motian) 07:03
9 The Riot Act (Paul Motian) 04:41
10 The Bag Man (Paul Motian) 05:33
11 One In Three (Paul Motian) 07:07
12 Dreamland (Thelonious Monk) 05:50

Recorded April 2004, Avatar Studios, New York
Produced by Manfred Eicher


眞壁えみ まかべ えみ
歌手、作曲家、三味線奏者。千葉県市川市生まれ。幼少の頃より、音楽の先生をしていた母の影響を受けピアノ、フルート、琴、三味線を習う。2008年ニューヨークに移住、ニューヨーク州立大学シティカレッジでジャズボーカルパフォーマンス科を卒業。ニューヨーク州立大学の大学院に通い、ジャズパフォーマンス科の修士課程を取得。
2015年より本格的に自分の音楽活動を開始。ニューヨークの他、 ヨーロッパ最大のジャズフェス、デンマークのコペンハーゲン・フェスティバルに2018年参加。2020年デビューアルバム『Anniversary』(Greenleaf Music) リリース。2022年11月、キット・ダウン (p)とトーマス・モーガン(b)とのトリオでイギリス公演ツアーを行う。2023年11月、同メンバーで日本ツアーを予定。現在、前回のカルテットに加え、ビル・フリゼール(g)、ジェイソン・モラン(p)等をゲストにアルバムを制作中。

 

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