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特集『ECM: 私の1枚』

石沢功治『Ralph Towner / My Foolish Heart』
『ラルフ・タウナー/マイ・フーリッシュ・ハート』

短期間ながらもピアニストして活動していたこともあるほどの腕前を持つタウナーは、大きく影響を受けたビル・エヴァンス(p)のハーモニー・アプローチなどを、自身のクラシック・ギターの技法に投影して、独自のスタイルを確立。あえてジャズ・ギタリストからの影響は意図的に避けてきたと、以前に取材した際に語っていたが、まさにクラシック・ギターとスチール12弦ギターを操るタウナーのプレイ・スタイルは唯一無二の世界観を放つ。

タウナーと言えば、名声を決定付けた1979年の初のソロ・ギター・アルバム『Solo Concert』がまず上がるだろうし、他にも充実のアルバムはあるが、個人的には、76歳を目前にした2016年2月に録音し、2017年に発表した『My Foolish Heart』を推したい。大半を占めるオリジナルでは研ぎすまされた感性が表出しているし、極め付きはエヴァンスが愛奏したこともで知られる表題のスタンダード・ナンバーだ。随所で出てくるピアノライクなクローズド・ヴォイシング、そこにギターならではのハーモニクス(倍音)の効果的な使用など、タウナーの熟成した奥深い表現力には、ただただ酔いしれるばかりである。


ECM 2516

Ralph Towner (classical guitar, 12-string guitar)

Recorded February 2016, Auditorio Stelio Molo RSI, Lugano
Engineer: Stefano Amerio
Produced by Manfred Eicher


石沢功治 いしざわこうじ
音楽ライター、音楽アナリスト。ジャズやフュージョンを中心にアルバムのライナーノーツの執筆、様々な音楽雑誌にて、インタビュー記事、ライヴ・レポート、及びアルバム分析記事などを寄稿している音楽ライター&音楽アナリスト。

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