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特集『ECM: 私の1枚』

藤本一馬『John Abercrombie & Ralph Towner / Sargasso Sea』
『ジョン・アバークロンビー&ラルフ・タウナー/サルガッソーの海』

ECMレーベルの存在を知る一番のきっかけはRalph Townerの作品でした。それ以前もいくつかのアーティストのECM作品を持っていつつもまだ20代半ばくらいだったこともありレーベルの知識もなく、それがどこからリリースされているかなど意識して音楽を聴いたことはほとんどないような状況でした。そんな中でGary Peacockとのデュオ盤『a closer view』という作品に出会い、一聴した時から衝撃で一気にのめり込みRalph Townerの一連の作品を買いあさったのでした。手に入るほとんどの作品がECMレーベルだったことで、どんどんその存在の大きさに気づいていくという感じでした。

その後『Solo Concert』という作品に出会い、そこに収録されていたのがJohn Abercrombie作の〈Ralph’s Piano Waltz〉、〈Timeless〉という2曲でした。このなんとも空間的で儚いメロディの世界にのめり込んでいったところに出会ったのが今回選ばせて頂いたこの2大ギタリストのデュオ盤『Sargasso Sea』です。それ以来このお二人の存在がとても大きなものになり、演奏家として作曲家としてその世界観にとても大きな影響を受けました。

そして興味深く思うのがそれぞれECM以外のレーベル(別プロジェクトやバンドも含めて)もリリースされている作品がありますが、そこではまた異なる質感の音楽が展開されていたりして、ECM作品でManfred Eicher氏のプロデュースの大きさも感じたことでした。この作品もまさにその空気感をまとった音作りだとあらためて感じます。この他にもECMからリリースされた作品はいろいろ大好きなものがたくさんありますが、今回1枚ということで自分もギタリストとして、人生の中で大きな出会いであったこのお二人のギタリスト(Ralphさんはピアニストでもありますが)にフォーカスいたしました。


ECM 1080

John Abercrombie (electric and acoustic guitars)
Ralph Towner (12-string and classical guitars, piano)

Recorded May, 1976 at Talent Studio, Oslo
Engineer: Jan Erik Kongshaug


藤本一馬 ふじもとかずま
ギタリスト、作曲家。1998年ヴォーカルのナガシマトモコとのデュオ”orange pekoe”を結成し幅広い支持を得、国内はもとよりアジア各国や北米でも活動を展開。2011年からソロ名義での活動が本格化し、ギタリスト、コンポーザーとしてインストゥメンタル音楽を中心にこれまで4枚の作品をリリース。また林正樹(pf)、西嶋徹(cb)、福盛進也(dr)との”藤本一馬カルテット”をはじめ、多数の共演者とのライブ活動を行っている。自己の内面を投影したメロディアスなオリジナル楽曲、リリカルなギター演奏のアプローチ、ときに野生的なダイナミズムまで、その音楽性は高い評価を獲得している。その他、様々なプロジェクトへ参加し、レコーディングや楽曲提供など精力的に行っている。近年の最新作品としては、2021年12月にジャズグループ”Remboato”のメンバーとして«星を漕ぐもの»(nagalu)、また2022年11月に畠山美由紀(vo)との双頭名義でのコラボ作品«夜の庭»(NRT/Rambling RECORDS)、2023年1月”林正樹 Group”のメンバーとして«Blur the border»(S/N Alliance)など。
公式ウェブサイト

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