JazzTokyo

Jazz and Far Beyond

閲覧回数 32,401 回

このディスク2017(国内編)No. 237

#08 『深井克則/リバース』

text by Keiichi Konishi 小西啓一

VIRA Records VIRA0113

深井克則 Katsunori Fukay / Piano
八尋洋一 Yoichi Yahiro / Bass
岩瀬立飛 Tappy Iwase / Drums

Live at SesaiHukkouKinenHall Sendai City, February 10, 2017
N’s SQUARE Ishinomakicity, February 12

1. Blue Sky Blue [深井克則] 2. On Green Dolphin Street [Bronislaw Kaper] 3. Yama-Uta [深井克則] 4. Caribe [Michel Camilo] 5. Song For K [深井克則] 6. What’s Going On? [深井克則] 7. Hotaru(蛍) [深井克則] 8. Rebirth [深井克則] 9. The Moon In The Cloud~Tin TinDeo [深井克則/Luciano “Chano” Pozo] Arrangment 全曲: 深井克則

日本のジャズ・シーンでの今年の“マン・オブ・ザ・イヤー”、それは間違いなくサダオさん(渡辺貞夫)である。新装なった今年の”東京ジャズ”、その大取りを飾ったサダオさんのステージ、本当に感涙ものだった。一緒に連れて行った(ぼくの)ラジオ局の若い連中も、異口同音に“いやー、貞夫さんって…”と言葉も無い程いたく感激。まさに今年のこのジャズ・イベントはサダオさんの為にあった様なもの。そして今年の終わりには自身のルーツとも言うべき“ビバップ”をテーマにした『リバップ』と、楽聖バッハの難曲に挑戦した『プレイズ・バッハ』の2作を同時発表。その年齢を感じさせない旺盛な創造・創作意欲、本当に頭が下がります。となるとこの2枚(1枚はクラシックものか…)が今年のベストとなる訳だが、サダオさんはジャズ殿堂入りを果たした別格の存在。そこでもう1枚となると、折角なのでJ-ラテン・ジャズの世界から…と考え、長年シーンを牽引してきたベテラン、深井克則の久々の新作『リバース』を上げることにした。

岡山市出身の深井は東京ユニオンなどでも活躍したベテラン・ピアニストで、ラテン・ジャズをメインに各方面で活躍、作・編曲家としてもその才を示す。ぼくなどは直ぐに彼のラテン・ジャズ・バンド”バンダ・カリエンテ“(今は休止状態らしいが…)の活躍に目が行ってしまうのだが、自身は余りラテン・ジャズなどと限定されるのを良しとしない様である。(ぼくのジャズ番組にゲスト出演してくれた時の話振りから…。ついでながら実に魅力に富んだ素適な”漢“でもありました)その彼の久々の新作『リバース』は、八尋洋一・岩瀬立飛というリズム・キング達を伴った今年に実施されたトリオ・ライブ作品。ライブ会場が仙台市と石巻市、そしてこのアルバム・タイトルと来れば、深井の意図する所は自ずと明白だろう。3人が自身の、そして勿論東北の”リバース”に向けた音楽による力感溢れた発信。そしてその長い音楽歴の割りに余り恵まれていたとは言い難い、深井という一人の卓越したミュージシャンの、優しさ、厳しさ、激しさ等々、その美点・秀点のほとんど全てがここには網羅されているとも言える。アルバム・タイトル曲や<やまうた>などの素敵なオリジナル以外にも、スタンダードの<オン・グリーン・ドルフィン・ストリート>、ラテン・ジャズの定番で自身も敬愛するミッシェル・カミロの<カリベ>など、お馴染みのナンバーを加え、それらを時に熱く・激しく、時に軽快・優雅に、ベテランならではの巧みさで弾き綴る。嬉しいことにラストはラテン・ジャズ・ピアニストとしての力量を目一杯発現した、チャノ・ポゾの銘品<ティンティン・ディオ>で締めくくられる。

ヴィヴァ”深井“、ヴィヴァ”リバース“!

小西啓一

小西啓一 Keiichi Konishi ジャズ・ライター/ラジオ・プロデューサー。本職はラジオのプロデューサーで、ジャズ番組からドラマ、ドキュメンタリー、スポーツ、経済など幅広く担当、傍らスイング・ジャーナル、ジャズ・ジャパン、ジャズ・ライフ誌などのレビューを長年担当するジャズ・ライターでもある。好きなのはラテン・ジャズ、好きなミュージシャンはアマディート・バルデス、ヘンリー・スレッギル、川嶋哲郎、ベッカ・スティーブンス等々。

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください