#03 Tokyo Flashback P.S.F. 発売記念 ~Psychedelic Speed Freaks~ 生悦住英夫氏追悼ライブ
text by 剛田武 Takeshi Goda
2017年はジャズや前衛/地下音楽のライヴ現場に訪れた回数はあまり多くはなかった。回数が減った分、印象的なライヴは少なくなく、密度の高いライヴ経験をしたとも言える。しかしながら、より直接的で刺激的なリアリティを感じられるアイドル現場の魅惑には及ばないというのが個人的な本音である。同じ音楽でこれほど大きく効用が異なる理由を述べようとしたら年を越してしまうので、深くは語らないが、音楽を面白いと感じる心の赴くところへ今後も足を運びたいと思っている。
そんな2017年の国内ライヴをひとつ挙げるとすれば今年2月27日に逝去した生悦住英夫氏への追悼ライヴとなる。拙著『地下音楽への招待』で生前の生悦住氏にインタビューした縁もあり、筆者も微力ながら企画に協力したが、氏が主催した「P.S.F Records」所属アーティストや関係者の有志の無償に近い尽力で実現したコンサートには、海外の音楽関係者やファンも多数駆けつけ、日本の自主的地下音楽の海外への認知拡大に多大な貢献を果たしたこのレーベルに相応しい場となった。
その一方で、頑固に自分の理想を貫いた生悦住氏への愛憎相半ばする発言や出来事も少なからず散見され、場やシーンを作ることの難しさと両義性を実感させられた。しかしながら信念に従って進むことで時代は前進する。願わくばこれが日本地下音楽の新章のスタートとならんことを。
(剛田武 2017年12月17日記)
https://jazztokyo.org/reviews/live-report/post-17957/