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このパフォーマンス2017(海外編)No. 237

#09 The Piano Era 2017
 ザ・ピアノ・エラ 2017

text by Takashi Tannaka  淡中隆史
photos by Ryo Mitamura 三田村亮

 

The Piano Era 2017
 ザ・ピアノエラ 2017
11月25日/めぐろパーシモンホール 大ホール

ディエゴ・スキッシ with 北村聡
Diego Schissi with Satoshi Kitamura (from Argentina & Japan)
マリオ・ラジーニャ
Mário Laginha (from Portugal)
ボボ・ステンソン・トリオ
Bobo Stenson (pf) Anders Jormin (b) Jon Fält (ds) (from Sweden)

2013年の第1回以来隔年開催で「21世紀のピアノ音楽を提示する」コンセプトで、ジャンルレスのピアノ・ミュージックとして続くシリーズコンサート「ザ・ピアノエラ」。めぐろパーシモンホール 大ホールの最高の音響で毎回2日間、1日に主に3アーティストあるいはグループのコンサートが行われてきた。過去2013年に矢野顕子(ピアニストとして)、アンドレ・メマーリ(Brazil)、ノラ・サルモリア(Argentina)、中島ノブユキ、ニルス・フラーム(Germany)、高木正勝、平井真美子。2015年には阿部海太郎、高木正勝、haruka nakamura PIANO ENSEMBLE、アンドレス・ベエウサエルト(Argentina)
、ヘニング・シュミート(Germany)
、タチアナ・パーハ / ヴァルダン・オヴセピアン(Brazil/Armenia)等が集ってきた。主催・企画・制作を二人で行う novus axis 堀内求、NRT 成田佳洋の音楽観を反映した独自のキュレーションで大きな発見と喜びを与えてきた貴重なコンサートだ。

第3回目の初日、2017年11月25日はディエゴ・スキッシ、マリオ・ラジーニャ、ボボ・ステンソン・トリオの3セット、ボボ・ステンソンは今までのラインナップの中で初の純粋なジャズ・ミュージシャンでもある。

<ポスト・アストル・ピアソラ世代>として現代アルゼンチン・ミュージックの最前線に立ちタンゴ、ジャズ、現代音楽シーンのジャンルを横断的に超えて行くピアニスト ディエゴ・スキッシのエッジーなライブを初めて聴けた喜びは大きかった。また女性歌手マリア・ジョアンとのデュオ編成で知られるマリオ・ラジーニャのソロも味わい深いものだった。

しかし多弁なこの2人の印象は3セットのボボ・ステンソン・トリオ
を聴いた後にはなぜか消滅してしまった。「同じピアノ」を3人が弾きつないだ比較のリアリティは強烈で「あのピアノ」からボボ・ステンソンは前2者を圧倒する多彩なニュアンスを最小の音符とピアニッシモを多用した弱音とで表現してみせた。耳を澄まし全神経を集中して聴かざるをえないマジカルな世界が観衆とホールを一体化させて虜にする。アンデルス・ヨルミンの驚くべきベースとヨン・フェルトの現代的なドラムは『Good Bye』(2005 ECM)のポール・モチアンを加えたトリオ・ミュージックをボボ・ステンソン・トリオのピークとの印象にその先がある事を教えてくれた。2018年1月予定の同トリオのアルバム『Contra la Indecision』からバルトークの楽曲が演奏されたがライヴでのイメージをさらに暖めながらリリースを待ちたいと思う。

https://jazztokyo.org/news/post-21117/

http://thepianoera.com/

 

淡中 隆史

淡中隆史Tannaka Takashi 慶応義塾大学 法学部政治学科卒業。1975年キングレコード株式会社〜(株)ポリスターを経てスペースシャワーミュージック〜2017まで主に邦楽、洋楽の制作を担当、1000枚あまりのリリースにかかわる。2000年以降はジャズ〜ワールドミュージックを中心に菊地雅章、アストル・ピアソラ、ヨーロッパのピアノジャズ・シリーズ、川嶋哲郎、蓮沼フィル、スガダイロー×夢枕獏などを制作。

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