#05 ASHITA NO OTO #2
text by 定淳志 Atsushi Joe
10月11日(木) 札幌・レッドベリースタジオ
ASHITA NO OTO #2
Kevin Corcoran (percussion), 横山祐太 (trumpet), 柴田詠子, 堀内まゆみ, リンノスケ (dance)
上京してこの目に焼き付けたピーター・エヴァンスの勇姿、ついに北海道上陸を果たした今井和雄とロジャー・ターナーのデュオ、藤山裕子&レジー・ニコルソンの心温まるデュオ、KOKOTOB の爽やかな音楽など、印象に残る来日ミュージシャンたちのライブの中で、ひときわ鮮烈な記憶を残したのは、実はケヴィン・コーコランのパーカッションであった。
「ASHITA NO OTO」は、札幌在住のトランぺッター、インプロヴァイザーである横山祐太が主宰する、新たな即興セッションのシリーズである(第1弾は6月、札幌出身ドイツ在住の高橋麻理絵(viola)らを迎えて行われた)。ズズーッ…と息の音を強調した横山のトランペットに対し、ケヴィン・コーコランは、スネアドラムのみのシンプルなセットに、さまざまな鉦物やオブジェクトを次々放り込んだり、時にアルコを使って微弱音を持続させたりしながら、場を繊細な音響のスープで満たしていくようであった。なお筆者には、ダンスの良しあしは全く分からない。そして3人のダンサーがそろってピタリと動きを止めた瞬間、時が止まった。にもかかわらず音(コーコランがドラムを構成する金属を擦るひたすらな共鳴音)だけが鳴り続けている、そんな不思議な感覚にとらわれた。その記憶こそが、1時間1,500円(前売り)のライブをベストパフォーマンスに推すゆえんである。