#03 R+R=Now: ロバート・グラスパー @Blue Note NYC
text by Hiro Honshuku
筆者が人生で心から感動したと言えるライブ体験、涙が止まらなくてどういたら良いかわからない状態に陥った経験は、3回ある。一つはボストンのパラマウント劇場でマイルスのステージを初めて見た時だ。マイルスが神に見えた。バンド全員が、あの普段ワイヤレスで右から左へ駆け回るダリル・ジョーンズまで身動きせずグルーヴし、マイルスの肩の動きに指令を読み取っていた。そのマイルスのスポットライトに浮き出された姿は、筆者にとって神だった。あとの二つのうちの一つは「カウント・ベイシー・オーケストラ」。トロンボーン・セクションがボヘ〜っと来た時にやられた。予期せず涙放出。あの超人的なタイトさにやられた。もう一つは「トリプル・トリート」。モンティー・アレキサンダー。ハーブ・エリス、レイ・ブラウン。この3人の特異なタイム感から生み出される、真のジャズのグルーヴに目頭が熱くなった。
この10月に経験したグラスパーのライブは、上記3つの体験とは少し違っていた。涙が溢れたというような感動を味あわせてくれるものではなかったが、筆者にとって多分一生忘れないであろう数少ないライブ体験になったことと思う。グラスパーは確実にマイルスを継いでいる。つまり、その時代を包括して次に進む音楽を構築するという作業だ。しかもマイルス同様ライブでのクリエイティビティーが実にスリル満点だ。
本誌ライブ・レポート:
#1041 R+R=Now: ロバート・グラスパー @Blue Note NYC
https://jazztokyo.org/reviews/live-report/robert-glasper-rrnow-live-at-blue-note-nyc/