JazzTokyo

Jazz and Far Beyond

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このディスク2019(海外編)No. 261

#07 『アンジェリク・キジョ/セリア』

text by Keiichi Konishi 小西啓一

Decca France

1. クカラ
2. 人生はカーニバル
3. サハラ
4. バイラ・イェマヤ
5. トロ・マタ
6. エレグア
7. キンバラ
8. ベンバ・コロラ
9. オヤ・ディオッサ
10. イェマヤ

Bass – Me’Shell Ndegé Ocello
Drums – Tony Allen
Horns, Bells – Gangbé
Tenor Saxophone – Shabaka Hutchings
Brass Band Performer – Sons Of Kemet
Vocals, Guitar – Angélique Kidjo
Producer, Arranged By – David Donatien


“Jazz Tokyo”今年の1枚<海外編>は、またまた他の人選が選ばないだろう、サルサ~ラテン・ジャズ分野からの1枚を…。ただ今年のアルバムはいささか異色作で、全アフリカを代表するディーバの一人、西アフリカ・ペナン出身のアンジェリク・キジョが、サルサ界のレジェンド的存在=セリア・クルスに捧げて、彼女の持ち歌を唄った『セリア』。アフリカ+サルサ+ジャズといった趣きの出色にして強力な1枚である。 このキジョどうもアフリカ音楽関係者や愛好家たちからは、アフリカ色が薄い(?)などとイマイチ評価がぱっとしないようなのだが、トーキング・ヘッズの銘品『リメイン・イン・ライト』を、彼女なりに全編リメークした前作など、実に着眼点やアイデアも素晴らしく、今作も自身愛唱しているセリア・クルスのナンバー〈キンバラ〉や〈クカラ〉などを、彼女なりのアフリカン・ポップス風仕立てにして、ダイナミックで迫力充分に歌い綴り、その歌唱力・企画力などには本当に感服させられる。バックのミュージシャンも、トニー・アレンやミシェル・ンデゲチェロなどのジャズ畑のミュージシャンも参加、彼らがキジョの熱唱を盛り立てるあたりもこのアルバムの肝の一つ。更に嬉しいことに、このアルバムには数曲、NY、LAと並び現在の最注目とも言える、UKジャズの旗手にしてサックス・タイタン、シャバカ・ハッチングスと彼のグループ「サンズ・オブ・コメット」の面々が参加していること。
じつを言えば今年の1枚には、このシャバカ&サンズ・オブ・コメットの衝撃作、『ユア・クイーン・イズ・レブタイル』を選ぼうかとも一瞬思ったのだが、キジョのアルバムに彼らが参加していることなども考え合わせ、この『セリア』にした経緯もあり、彼らの存在はアフリカ~カリブ~UKを結ぶパン・アトランティック・ミュージック回路といった視点でも、かなり重要だとも言える。 いずれにしろこのアフリカン・クイーン、アンジェリク・キジョの力量が、十二分に発現された注目の作品だと思います。

小西啓一

小西啓一 Keiichi Konishi ジャズ・ライター/ラジオ・プロデューサー。本職はラジオのプロデューサーで、ジャズ番組からドラマ、ドキュメンタリー、スポーツ、経済など幅広く担当、傍らスイング・ジャーナル、ジャズ・ジャパン、ジャズ・ライフ誌などのレビューを長年担当するジャズ・ライターでもある。好きなのはラテン・ジャズ、好きなミュージシャンはアマディート・バルデス、ヘンリー・スレッギル、川嶋哲郎、ベッカ・スティーブンス等々。

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